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2018年07月13日

腸管バリアと腸内細菌

腸管バリアと腸内細菌


 腸というのは「内なる外」と呼ばれ、常に外界からの危険にさらされているということは、すでにご案内したとおりです。いってみれば、「口から肛門まで身体の中に一本の管が通っている・・・」、その管を通じて生命活動を支えるあらゆる、エネルギー源を賄うために管の内側に色々な食ものを取り入れているからです。

 そのため、腸管には多くの免疫システムが備わっているのと同時に、腸管の壁自身も細菌や毒素の侵入を防ぐために強固である必要があります。

 そのために、腸管では必要なものは身体にどんどん取り入れて、害を与えたり不必要なものはどんどん排出させるというような交通整理が常に行われているのです。

 その機能を行っているのが、腸管上皮細胞と言わる表面のもっとも外界に近い細胞です。この細胞は、ムチンなどを主成分とした粘液でカバーされています。

 一言で、消化管と言いましても胃、小腸、大腸など様々です。

 以前は、「胃」はPHが1近いほどの強酸性の胃液のために無菌状態であると考えられていましたが、ピロリ菌を始め、胃酸でも死滅しない常在菌が存在することが分かってきました。

 また、小腸では、100~1億個、大腸では、100億~10兆個と出口に近くなるにつれて数を増やして腸内細菌が生息していると言われていますが、状態や個体によって差も大きいというのが実情のようです。

 順天堂大学大学院医学研究科プロバイオティクス研究講座特任教授の山城雄一郎氏によりますと、腸管内のバリア機能の一つである粘液層も小腸よりも大腸のほうが厚くなっており、腸内細菌から守る機能が強化されているようです。

 その一方で、大腸の入り口付近にあたる回腸などでは、絨毛がほどんどなくあえて細菌が入りやすくさせるというところがあります。この絨毛が無いところはパイエル板と呼ばれ、免疫を司るリンパ球が集中しています。

 つまり、この回腸のパイエル板が消化管内の細菌や毒素などに関する情報収集センターであり、その情報をもとに免疫システムに指令を出すための機能をもっており、通常200か所位あるのだそうです。

 回腸には、大腸に比べて若干の酸素が残っているために、偏性嫌気性菌であるラクトバチルスなどの乳酸菌は、この回腸辺りに定着することが多いとされています。L.カゼイ・シロタ株などの乳酸菌も回腸周辺にとどまり、乳酸などの短鎖脂肪酸を分泌したりすることで身体の中の免疫システムとの相互作用をおこなっていると考えられているのです。

 ある意味パイエル板は、特別な構造をしているために生きた菌も含めて積極的に体内に取り入れることがあるそうなのですが、パイエル板以外から細菌が体内に入ることは「良くない・・・」と考えれらています。

 そもそも、腸管バリア機能のなかに、腸管上皮細胞の隙間を密着させるという機能があるのですが、その機能に障害がおこることで、細菌や毒素が体内に流入してしまうことがあるというのです。この現象を「腸漏れ(リーキーガット)」と言います。

 この「腸漏れ」は、タイトジャンクション(Tight Junction)機能の不全をいわれており、腸内細菌の乱れによっておこされているとも言われています。

 Ⅱ型糖尿病などの疾病と腸内細菌との関係は良くいわれていますが、2014年の報告では、ヤクルト本社の腸内細菌自動解析システム(YIF-SCAN)を使い、糖尿病患者の腸内から腸内細菌から生きたまま血液中に移行するというような世界で初めての事例も紹介されました。

 この報告にあるように、腸内細菌の乱れが、免疫力の低下や体内への細菌やウィルスの侵入の直接の原因になるということであれば、健康増進のための第1歩が「生きた菌を利用して、おなかの調子を整える」ということにもなりそうですね。




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Posted by toyohiko at 15:45│Comments(0)身体のしくみ
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