2019年02月15日
お母さんから赤ちゃんのへのプレゼントは腸内細菌だけではなかった

よく、「赤ちゃんの腸内細菌はお母さんからの最初のプレゼントである・・・」ということを聞いたことのある人も多いと思います。
このことは、人間だけではなく多くの動物において様々な形で、母子間の腸内細菌の伝搬が行われています。その中でも、有名なのがコアラの母親が自分の便を食べさせることで、青酸性の毒素の含まれるユーカリの葉っぱを食べることができるようになるというような事例です。
しかし、そうなってくると様々な事情で、「帝王切開分娩をせざるを得ない・・・」とか、母乳での授乳が難しいという方にとっては、非常に残酷な話になってしまいます。
東京女子医科大学小児科学講座の永田智教授によりますと、母子間での腸内細菌の分与は必ずしも、経膣によるものではなく、異なるメカニズムによって支えられているのでは・・・という考察をしています。
その考察のきっかけになった研究が、経膣分娩と帝王切開ということなる分娩方法で出産した新生児の4日目の腸内細菌と1カ月後とを比較したものです。
比較の結果、生後4日目の腸内細菌の比較では、乳酸菌類の数など両者は似ても似つかぬパターンを示していました。
このことは、従来考えられている、子宮内や産道に存在する母親の腸内細菌が赤ちゃんにお母さんから直接プレゼントされているという考え方にも合致する結果になるのですが、1カ月後の結果を詳しく調べると、どうやら従来の仮説だけでは説明がつかない事がわかってきたというのです。
その1カ月後の結果というのは、経膣分娩で母乳栄養を摂取する乳児と帝王切開で人工乳分娩の乳児の腸内細菌を比較すると驚くほど類似したパターンになっていたというのです。
つまり、「腸内細菌は母親からのプレゼント・・・」ということだけでは説明がつかないということのある意味での証明にみたいなものになってしまった・・・というのです。
前出の永田教授によりますと、胎児の腸内細菌の起源については、現在3つの経路が確認されているそうです。
第1に、母体の腸内細菌が免疫細胞の中の樹状細胞と呼ばれる自分が取り込んだ抗原などの免疫に関する情報を他の免疫系の細胞に伝える役割の細胞をによって行われている。
第2に、口腔内細菌が血流によって胎盤に運ばれる。
第3に、膣内細菌が徐々に膣内を移動し子宮内に侵入する経路です。
この三つの経路から考えると、もっとも考えられるが第1番目の樹状細胞に起因するということなのでは・・・ということの仮説からすると、母親の免疫細胞のなかの樹状細胞が胎盤に運ばれ、ある種の腸内細菌の設計図として赤ちゃんに引きつがれるということの可能性は大いにあるということになりそうということのようです。
もう少し、詳しくいえば、お母さんからプレゼントされた樹状細胞による設計図が、様々な腸内細菌に対して、「この菌は〇、この菌は☓・・・」というように産後、赤ちゃんの腸内に入ってきた菌に対して取捨選択することで、異なる条件での出産でも同じようなパターンの腸内フローラを形成していくのでは・・・ということが赤ちゃんのお腹の中で起きているということです。
永田教授によりますと、「お母さんからの腸内細菌の設計図」説も有力である一方で、その設計図も含めてお母さんの腸内細菌が一番重要であることには変わりはなく、もっとも大切なことの一つでだそうです。
先ほどの、赤ちゃんへのプレゼントの3つの方法からすれば、「お母さんのお腹のバランス」「日々の歯磨きも含めた、しっかりとした口腔ケア」「不必要な抗菌薬などの使用への配慮・・・」が非常に大切になりますね。
Posted by toyohiko at 16:04│Comments(0)
│身体のしくみ