2019年03月16日
免疫力は高めるだけで良いのか・・・Ⅰ

「免疫力を高める」という言葉を聞いたときに、ほとんどの方があまり抵抗なく、「そうだよね・・・」という印象を持つと思います。
当然、免疫力は身体を外敵から守ったり、本来正常に再現されるはずの細胞のミスコピーに対しての対応など、健康の維持にとっては 非常に大切な仕組みなので、「高い方が良い・・・」と考えがちです。
しかし、花粉症を始め様々なアレルギーと言われる症状のメカニズムを考えたときには、「免疫システムが過剰に働くことで炎症が起きてしまう・・・」ということになりますので、どうやら免疫力は高ければ良いわけではない・・・ということになりそうです。
改めて、免疫に関する仕組みを考えてみましょう
そもそも、免疫細胞ってどこにあるのという疑問を持つ人も多いと思いますが、免疫細胞のほとんどは血液に含まれる白血球に含まれています。
その中に、マスト細胞、顆粒球、単球、リンパ球など様々な役割の免疫細胞に分類され、骨の中の造血幹細胞からつくられます。
ご存じの方もおられると思いますが、免疫細胞というのは一つの種類ということではなく、色々な種類の細胞がそれそれぞれの役割をすることで、一つのシステムという形になっているのです。
免疫細胞の役割については、まずはじめに「自然免疫系」チームと「獲得免疫系」チーム、その二つのシステムに指令を出すチームに分かれていると考えるとわかりやすいかもしれません。
まず、自然免疫系チームについて考えてみましょう。
このチームは、街中をパトロールしている警察官の様な存在と考えていただけると良いかもしれません。
これは、敵を見つけたときに食べてしまうことで攻撃するパターンが多いようですが、好中球とかNK細胞と呼ばれるものがこれに当たります。
常にパトロールをしているので、いつも起こりやすい「細胞のミスコピー」や日常性の高い外敵への対応を得意としています。
これを、まちなかで発生した犯罪と考えて見た場合、「パトロール中の少人数のチームでは、対応しきれない・・・」ということも当然のことながら起きてしまうと思います。
そんなときには、応援部隊を呼んだり、次の対策を講じるために情報を伝達したりするチームも必要です。その役割をするのが、貪食細胞の一つであるマクロファージや樹状細胞と呼ばれる細胞です。
これに対して獲得免疫系チームは、様々な情報を取り入れた上で準備をしてから出動するチームになります。つまり、「偶然見つけた敵・・・」、ではなく、捜査情報によって得られた「敵」を攻撃するための武器もふくめての対応になります。
つまり、獲得免疫系の方がしっかりとした「武器」、つまり重装備になりますので、その標的に対して使えば問題ないのですが、相手を間違って攻撃をしてしまうと周りに拡散してしまう被害も大きくなってしまいます。
この「相手を間違って攻撃する・・・」の一番の症状がアレルギーによる様々な炎症です。
つまり、「本来敵ではない相手を敵と認識してしまう」ことと、獲得免疫系による攻撃になってしまうために、攻撃力が強すぎてしまうことに原因があるのです。
このような状況から考えてみますと、免疫力は相手に合わせて強さをうまく調整できるのが一番良い・・・ということになります。
この攻撃力を調整するのもT細胞と呼ばれる免疫細胞なのです。このT細胞の中でもTh1とTh2という二つのヘルパーT細胞という細胞があるのですが、それぞれ役割が違います。
Th1は、主に癌細胞やウィルスに感染した細胞を排除する命令をする役目、Th2は、抗体という大きな攻撃力を備えた武器をB細胞につくらせる命令を出す役目をします。
それぞれ役割が違うために、Th1とTh2のバランスが崩れてしまうことで、アレルギーや自己免疫疾患につながってしまうのです。
だからこそ、免疫力は「高い」、「低い」ということだけではなく「調整」ということが非常に大切になるのです。
実際に「免疫調整作用」という言葉もありますが、身体を外敵から守る免疫システムというのは、非常に複雑な仕組みになっていますので、単純ではなさそうですね・・・
Posted by toyohiko at 07:39│Comments(0)
│身体のしくみ