2019年05月24日
睡眠についてあらためて考える

春眠暁を覚えず・・・というように、春から初夏にかけては気温の変化の厳しさや社会的な環境の変化も含めて疲れがついつい溜まって「ウトウトと・・・」というような経験もある方も多いかと思います。
睡眠の大切さについては、不眠によるQOLの低下も含めて、いまさら言うまでもないという方も多いかと思いますが、そのメカニズムに関してはまだまだ未解明のところが多いという事があるのも事実です。
人間は昼行性の動物になるので、自然に生活をしていれば夜になると眠くなり、朝になると目が覚めるというサイクルを基準に生活をしています。このサイクルを睡眠と覚醒という言葉に置き換えた時に、覚醒についても、睡眠についてもそれぞれピークといわれるようなリズムがあるそうなのです。
覚醒についていえば、通常考えるとピークが昼間になると考える方も多いかもしれませんが、実は21時と意外に遅いのだそうです。とはいえ、そのピークを過ぎると、血圧や心拍数が低下し副交感神経が優勢になることで急速に睡眠モードに移行します。そして、朝になると体温が上がってきて、覚醒モードに入るという概日リズムによって成り立っているとされています。
この概日リズムである約24時間周期でパターンの変化などが一部の遺伝子によって作られることに興味をもった研究者も多く、1970年代から2000年代にかけて約24時間のリズムを持つ多くの遺伝子が発見されたのです。
さらに研究が進み現在では、体内時計も含め脳内にあるたんぱく質の状態の変化によって睡眠・覚醒のサイクルが出来上がっているという事が解明されつつあり、そのたんぱく質の数は80種にも及ぶという事のようです。
睡眠は、「脳を休めるため」という認識の方も多いと思いますが、必ずしもそう言えないという事のようで、睡眠中も脳は活発に活動をしており、むしろ活動量が上がることもあるそうなのです。
だったら、睡眠中に一体脳は何をしているのだろうか・・・?という疑問になると思いますが、昔からよく言われている説の一つが、記憶の整理です。この説を裏図けるような研究もあるようで、先ほど言いました睡眠に関する80種のたんぱく質のうち69種が神経細胞の接続部分であるシナプスという場所にあるたんぱく質だったそうです。
シナプスは、情報を神経細胞間で繰り返しやり取りをし、その関係が覚醒時には強化され、睡眠時には弱くなるということが次第にわかってきており、この作用によって睡眠中にさほど重要でない記憶を削除するような仕組みがあるのでは・・・というような従来の仮説がシナプスの働く状態によって解明されようとしているという事もあります。
また、「眠くなる・・・」ということと、80種のタンパク質がリン酸化することが強くかかわっているようで、睡眠は単なる疲れなどという事だけはなく、思った以上に複雑な仕組みの上に成り立っていると同時に、今後のさらなる解明に期待が高まってくると思います。
Posted by toyohiko at 16:38│Comments(0)
│身体のしくみ