2019年07月05日
睡眠不足と社会資本

先日、イギリスの科学雑誌Natureで「睡眠不足は投票率をはじめとする社会的行動を減少させる」そして、観察研究、自然実験、無作為化実験により、睡眠不足が、投票率、チャリティーへの寄付、請願書への署名などの向社会的行動を減少させることが示された。という主旨の研究論文が紹介されました。
「睡眠と社会的行動」という、普通に考えた時に結びつかないような二つの事象のつながりに対して、研究をするというある意味、「思いもつかない・・・」というような発想であったことに興味をもったということも事実です。
しかも、「睡眠」と「社会的行動」との中に有意な相関関係が示されたことについては、現代社会の様々な課題解決において大きな問題提起として取り扱われるのかもしれません。
この研究は、アメリカ人を中心に行われているとうことですが、そもそも、個人主義や公共性欠如などの浸透によって損なわれる社会的課題についての問題意識が高くなって来たことの現れなのかも知れません
また、その一方で「睡眠不足」についても、健康維持との関連性について大変重要な要素として注目されている項目のひとつです。特に、日本の場合は通勤時間や仕事での拘束時間の長さなど、深刻な健康課題のひとつになっています。
今回の結果によりますと、睡眠不足の人の投票率の低下や、意図的に睡眠時間の短縮を図った場合に、投票、請願書に署名し、慈善団体に対する寄付などの意欲の低下がみられたということですが、これらの因果関係についてはこれからの課題になると思います。
しかしながら、これらの結果が、現在の睡眠不足のレベルが社会資本対して強いマイナス効果を誘引しているということなのです。
睡眠そのものに関しては、脳や消化器官をはじめ身体中の隅々にわたり、睡眠中に行われている修復や調整用があることは知られています。しかし、そのことがこれだけ直接的に関連性があるということに対しては、AI時代の新たな解析手法も含め思いもよらない因果関係というものが導かれていく・・・というような事はこれからもより多くの事例が示される様な気がします。
今回の研究で興味深いのは、社会的課題の解決に関する関心度と睡眠時間の減少という現代に置ける二つの重要とも言える課題がお互い関係している可能性が示唆されたという点にあると思います。
言いかえれば、「睡眠不足」とういう一つ目の課題を解決することで、公共心の向上などの社会的行動につながる機会が増えてくる・・・というような、より大きな課題が解決できるというということにもつながるからです。
睡眠不足は、仕事や学校に行くなど、私的な行動に悪影響を及ぼすことのみでなく、社会や民主主義を保持する社会的行動への影響についてもマイナスの影響があるということになれば、現在、叫ばれている「働き方改革」についても、もう少し違った角度での積極的解決の動機になることでスピードアップにもつながります。
「健康」という視点だけでなく、「社会」という視点で「睡眠」の意義を見直す事も大切なのかもしれませんね。