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2019年08月02日

お腹の中の免疫システムとの友好関係

お腹の中の免疫システムとの友好関係


 ヒトと微生物とのかかわりが、免疫システムも含め非常に大切な関りをしているということについては、近年多くのことが解りつつあります。

 その中で、現在でも多くの疑問になっているのが、それぞれの宿主固有の腸内細菌叢を構成する微生物の取捨選択をどのようにして決めているのだろうという疑問です。

 アレルギーの視点から考えれば、免疫システムが、「有害になりうる腸内微生物ではなく、全く無害なアレルゲンを攻撃の標的にしてしまうのか・・・」ということや、感染症の罹患経験の少ない人ほどアレルギーになりやすいことなど、理解できるような・・・できないようなことが多いということも事実です。

 特にアレルギーと抗生物質の使用については強い相関関係が示されています

 抗生物質は、細菌を殺すための薬剤になりますので、当然、その薬の作用により菌の抑制が図られます。

 スウェーデンの事例ですが、出産した赤ちゃんの腸内細菌の種類がパキスタンの赤ちゃんに比べて少ないことと、アレルギーの発症率が上がりつつあったということがあったそうですが、その理由の一つとして、スウェーデンの産科の規程書に妊婦の性器の分娩前消毒が含まれていたということが言われています。
 このことは、分娩前の処置ということもあり、産後最初に伝搬される微生物の種類に大きな影響を及ぼし、結果としてその後の腸内細菌叢の多様性にマイナスの影響を及ぼしたのではと考えられています。

 これらの事例などからみても、衛生な環境病原体との接触そのものよりも、より多様性が高く古くから友好関係を築いた正常な細菌叢の形成が大切なのではといった、ストラカンの衛生仮説から進化した「旧友仮説」というものに考え方が変わってきているようです。

 そうなれば、人間はどうやって「信用していい微生物」と「そうでない微生物」を見分けているのだろうかという疑問が沸き上がってきます。

 免疫側の考えたかからすれば、宿主の健康を支持するためには、炎症反応を促進する指示と炎症を抑制する指示のつり合いというものが非常に重要です。従ってそのバランスを必要に応じて保っていくためにも腸内細菌の多様性が必要になってきます。

 当然のことながら、感染症の原因となる病原体はその表面にある抗原を免疫システムが検知するようになっているのですが、この抗原は危険信号を知らせる赤い旗のようなもので自分自身の存在を示しています。
 以前は、病原体のように自身の存在を示すことは有益な微生物はしないと考えられてきたのですが、実はそうではなく、有益な微生物は「このまま居座っていられるように免疫システムに働きかけている」ということを行っているようなのです。

 この微生物と免疫システムとの接点と考えられているのがTレグ細胞と呼ばれる制御系T細胞なのです。

 実際に、Tレグ細胞の数と腸内細菌叢の多様性とは密接に関係していることが解ってきており、微生物自身の生き残り戦略として、宿主とともに生存を確実なものにするために様々な役割を担いながら免疫システムとの友好関係を築いているということになるのかもしれません。



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Posted by toyohiko at 11:52│Comments(0)身体のしくみ
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