2019年12月27日
グルテンフリー(食物不耐症)を考える

グルテンフリーという言葉を耳にすることがありますが、これは小麦などに含まれるタンパク質が免疫システムとの不具合を起こしてしまい炎症などによるアレルギー症状につながったりする人が増えたことにより、グルテンを含まない食品を表す言葉として使われています。
そもそもグルテンは、パンなどに入っているたんぱく質で生地をつくる過程で生成されるといわれており、このグルテンがイースト菌によって発生する二酸化炭素を取り込みながら膨らんでいくので、ある意味「ふっくらとしてやわらかいパン」の象徴でもあります。
ヒトと小麦との関わりは、約1万年前の新石器時代まで遡るといわれており、近年まで多くの問題もなく食物として活用してきました。
しかし、セリアック病の発症の原因とされることもあり、グルテンは悪いもの・・・として認知されるようになっています。このセリアック病は自己免疫疾患の一つで、慢性的な下痢や腹痛を伴いQOLに対して大きな影響を与える症状が特徴です。
マサチューセッツ小児総合病院の胃腸科医アレッシオ・フォサーノ氏によりますと、セリアック病の発症原因はゾヌリンというたんぱく質が腸壁の透過性を高めてしまい、その透過性が高まった状態で流入してしまうグルテンが自己免疫反応を誘引することで腸の細胞を攻撃することで起きるといわれています。
つまり、セリアック病の場合には、グルテンを摂取しないということは非常に大切なことになるのですが、すべての人にとってグルテン=悪者という図式に、専門家の中にも疑問を感じてる方もいるそうです。
例えば、「ヒトはそもそも、小麦や乳製品を食べるように出来ていない・・・」という主張を耳にすることもありますが、確かに、多くの哺乳類において授乳期のみにおいて乳糖(ラクトース)と分解する酵素を持つとされています。
今でも、乳糖不耐症と呼ばれる症状を持つ人も多いですが、人類の長い歴史の中で乳糖を分解するための酵素をつくり続ける能力を持つようになったとされています。これはその時代に、ヤギや羊、そして牛の飼育という生活習慣によって乳糖を分解しつづるための微生物を獲得したと考えられているのです。
これは、世界中の多くの人類が乳製品を摂取し続けるという選択が進化の過程において有利に働いた事例の一つです。
このことからしても、セリアック病のような症状が近年急激に増えてきたということからしても、「本来食べるように出来ていない・・・」という説明ではなかなか理解しにくいにところがあることもあります。
つまり、急激に近代化が進んで来た以前の時代では、普通に食べてきた・・・という事実があるからです。
近年急激に増加した、グルテンや乳糖(ラクトース)のような特定の成分による消化器官の不具合などの症状については、セリアック病の症状にみられるような腸内環境のディスバイオーシスそのものや、それによって起こる腸の透過性が原因であるという見方をする研究者もいるようです。
都市化や西洋化といわれる中、腸内環境の多様性が無くなってきたという話を耳にすることもありますが、グルテンを含めた、「あまり身体によくない・・・」といわれる成分の中には、腸内環境の多様性の欠如という状況下におけるトリガーの一つになっているものも少なくないのかもしれません。
さらに、今のままではそのようなトリガーとなってしまう成分がこれからもっと増えてしまう可能性も否定できません。
確かに、アレルギー症状も含めて症状に苦しんでいる人たちにとっては特定の成分の除去は非常に大切なことです。しかし、普通の人たちにとって先人たちが普通に食してきたグルテンなどの成分にこだわるよりも、プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を意識した、シンバイオティクスの考えかたを日常の食生活の中に取り入れることの方が大切なのかもしれません。