2019年12月30日
口はお腹の入口という考え方は必要か?

歯周病といえば口臭や歯を失う原因などともいわれ、高齢者の半数以上が歯肉炎などの兆候が見られるといわれています。
この歯周病も原因となるのがgingivalis(ジンジバリス)と呼ばれる細菌です。
近年では、この歯周炎が原因で糖尿病、動脈硬化性疾患、自己免疫疾患などの様々な疾患のリスクを高めることも明らかになりつつあるともいわれています。
新潟大学大学院の山崎和久教授によりますと、腸内細菌叢の変化がメタボリックシンドローム関連の疾患のリスクを高めるということは以前から、いわれていたことでありますが、近年そのリスクが歯周病の関係する疾患と共通していること注目が集まっているとことです。
歯周病の原因菌であるgingivalisは、非常に生命力の強い菌ということもあり口腔内のみならず腸管などの消化器官や羊水など、そのほかの器官でも発見されています。
前出の山崎教授は、マウスの実験で口から投与したgingivalisが腸内フローラを変化させることで、全身に軽微な炎症を誘導し、様々な全身疾患との因果関係を持っているという内容にの報告をしています。
今回は、マウスで示した仮説が人に於いて同様のメカニズムがあるかどうかを、歯周炎患者の腸内フローラと口腔内菌叢を健常者と比較し解析を行っていますので、ご紹介させていただきます。
この実験は、中程度から重度の歯周炎患者29名と全身的に健康であり、歯周組織に問題のない23名の糞便と唾液を調査しています。この時に、口腔内菌叢、腸内フローラのいずれにも影響が出ていない状態にするために、双方のグループともに半年以内に抗生物資の全身投与を受けていないということも条件の一つにしています。
解析の結果として、両グループとの中で、腸内フローラを構成する微生物の構成が優位に違っていたのです。歯周病の患者の場合はバクテロイデス門が優勢だったのに対して、健常者の場合はファーミキューティス門の細菌の比率が高いという結果となり、ヒトの場合においても口腔内での細菌叢の乱れが、腸内フローラの乱れに少なからず影響を受けるという仮説が検証されたとも言えます。
重度の歯周病患者の口腔内には約100万個のgingivalisがおり増殖をしているといわれています。1日に飲み込んでるといわれる唾液の量の1~1.5ℓとして考えると100億個のgingivalisが消化管内に入っている侵入している事が予測されます。
また、口腔内は、大腸に次いで多くの微生物が生息し共生関係を保っていると考えられています。口腔内もお腹の中と同じように、口腔内菌叢のバランスが崩れることで、ミュータンス菌によるう蝕(虫歯)やgingivalisによる歯周病を誘発すると考えられています。
その乱れた状態が、腸内フローラのディスバイオーシスにも大きな影響を与えていることが、示唆されたということになるのです。
このようなことから考えると、単に口の中・・・といえども、沢山の共生微生物によって健康が保たれているという視点に立てば、殺菌という行為にも少し敏感になる必要があるかもしれませんし、悪い菌を増やさないための歯垢の除去には一層の注意が必要になってくるのかもしれません。
Posted by toyohiko at 15:23│Comments(0)
│身体のしくみ