2019年04月19日
口腔ケアと腸内フローラと糖尿病

近年、口腔内の様々な細菌が歯のう触(虫歯)や歯周病というような口腔内の疾病だけでなく、身体に関する様々な影響についての関心が高まってきています。
その一つとして、「歯周病の原因菌であるジンジバリスの生菌が、死産してしまった母体の羊水から発見された」ということがあります。
鶴見大学歯学部探索歯学講座の花田信弘教授が、歯周病原因菌とされるジンジバリスの反復経口投与による、全身性炎症及び糖尿病と関連の深いインスリン抵抗性との関係についての動物実験を行っていますのでご紹介します。
そのそも、血液中の糖は、すい臓から分泌されるインスリンの助けを借りて細胞に取り込まれ、活動するためのエネルギーの源となります。
つまり、インスリンが無いと細胞に取り込まれないために、インスリンの量が必要になります。その一方で、分泌量は充分にあるのにも関わらず、インスリンがうまく働かずに細胞に糖が取り込まれずに血糖値が高いままになってしまうような状況をインスリン抵抗性と呼びます。
このインスリン抵抗性は、運動不足や過食による肥満(慢性炎症)によって引き起こされると言われています。
つまり、今までは、インスリン抵抗性による糖尿病について、食事制限や運動負荷によって改善を試みるケースが一般的だったのに対して、歯周病菌によってのインスリン抵抗性の誘導についての仮説を検証したものと云うことになります。
実験では、ジンジバリスの経口投与によって、敗血症などに関係していると言われている血清エンドトキシン濃度の上昇が見られたということです。
この現象は、歯周病菌の細胞の周りに出てくる外膜小胞が関与し腸内フローラの状態を攪乱しているのではと考えられています。
また、有害な細菌の外膜小胞は腸管の健康を損なうという報告は以前からされているということのようなので、「歯周病菌と腸内フローラそして、インスリン抵抗性との関係についての因果関係についても説明がつく・・・」と云うことになるというのです。
そもそも、口腔内は歯垢などのバイオフィルムが形成されやすい環境にあります。このバイオフィルムは、強い薬剤耐性と嫌気性の環境を持つために歯周病を始めヘリコバクター・ピロリ菌の様に、本来、口腔内の常在菌とは云えないような細菌まで生息することが可能になりやすいということがあります。
今回の花田教授の報告によりますと、このバイオフィルムの存在が歯周病菌の反復経口投与につながるという事と同時に、効果的な除去が、歯周病のみならず、腸内環境の改善や歯周病菌の腸管内への侵入による慢性炎症の症状、ひいては糖尿病などの予防につながる可能性が示唆されたということになるのです。
バイオフィルムの効果的な除去というこことになりますと、当然、しっかりとした正しい歯磨きと云うことになります。
そこには、当然「歯磨き剤の選択」と云うものも重要な要素になってきます。とはいっても歯磨き剤の基材と呼ばれる基本的な原材料について厚生労働省によって指定されたもので構成されていますので、様々な商品のなかでの違いを見つけにくいということも現実にあります。
しかし、その中でも殺菌と云うことではなく、ハイドロキシアパタイトの様な歯と同じ成分のナノレベルでの超微粒子を利用することで、より効果的にバイオフィルムを除去することが出来るので、歯磨き剤も気にしてみると良いかもしれません。
このバイオフィルム・・・一番増えやすいのが唾液の分泌が少なくなる睡眠時です・・・
「夜歯磨きせずに、一晩立った場合の菌の数は、肛門の周りの30倍にものぼる・・・」という話を聞いたことがあります。
歯だけではなく、全身の健康のためにも・・・30倍の菌が消化管内に入り込む・・・というイメージをした方がいいかもしれませんね。
Posted by toyohiko at 14:16│Comments(0)
│身体のしくみ