2020年02月22日
感染症とシンバイオティクス

シンバイオティクス言葉は、身体に有用な微生物であるプロバイオティクスとその微生物の食べ物となる食物繊維やオリゴ糖などの難消化性の炭水化物であるプレバイオティクスを併せて利用するという健康に対する維持向上のために注目されています。
このシンバイオティクスですが、近年医療の現場などでもその安全性や健康に対する腸からのアプローチの効果という事もあわせて注目されつつあります。
名古屋大学大学院医科系研究科腫瘍外科学の梛野正人教授らのチームは、術後の感性症の抑制を目的とし、このシンバイオティクスを術前・術後の患者に取り入れています。
梛野正人教授によりますと、「腸内フローラの重さは約1㎏あり、脳が約1.3㎏、肝臓が約1.5kgという事からすれば、生命維持に欠かせない臓器と同じくらい重量があることから一つの臓器と考えられます。」と腸内フローラの重要性を説いています。
梛野正人教授の専門は、胆管部や胆道の癌の外科的治療を専門としています。この胆道癌の手術は、癌治療の手術の中でも難しく、時間がかかることが知られており十数時間かかるとされています。
このように、長い時間の手術の場合には患者への肉体的負担も大きいために、術後の免疫力低下とともに、感染症へのリスクが高いことが大きな課題の一つとしてありました。
先ほども言いましたように、術後は免疫力が著しく低下してしまうために、健常な人ではかからないような細菌やウィルスの影響を受けやすくなってしまいます。
通常では、発症しないような上気道感性症でも肺炎のような症状を招いたりすることもリスクの一つとして細心の注意が払われていますし、敗血症、腹腔内膿瘍、創傷部感染などもその一つです。
梛野正人教授は、このリスクを最小限に抑え術後の早期回復を目的とし、シンバイオティクスの投与を勧めてているのだそうです。
実際に、シンバイオティクスの投与したグループと投与しなかったグループでは、術後の感染症の罹患率が非投与グループで52%であったのに対して、投与したグループは19%であったという結果も出てきています。
現在では、術前の2,3か月間の間に乳酸菌シロタ株の入った飲料、そしてビフィズス菌の入った飲料という2種類のプロバイオティクスにプラスして、10gのオリゴ糖をプレバイオティクスとして毎日摂取していただき、手術に備えていただいています。
このような取り組みは、術後の入院日数や抗菌薬使用日数の減少など患者のQuality of life (QOL)の改善にも有用であることが示されています。
このような、シンバイオティクス投与についての一番の良さは、本来お腹に中にいる腸内常在菌に対して善玉菌を利用して活性化させるというメカニズムを利用しているために、抗菌薬などとは違い、「副作用がない・・・」という事です。
このような、シンバイオティクスに関する取り組みは術前の特別なものでなく、日常的な「予防医学」の取り組みの一つとして多くの方々の健康にお役に立てると良いですね。
Posted by toyohiko at 15:43│Comments(0)
│身体のしくみ