2020年03月14日
ガラクトオリゴ糖と腸内フローラ

オリゴ糖という名前は既にご存知の方方もいると思いますが、ガラクトオリゴ糖という名前はご存知ない方も多いのかもしれません。人間の母乳には約130種類のオリゴ糖が含まれていることが解っていますので、一言でオリゴ糖といいましても非常に多くの種類があります。
その中でも、代表的なオリゴ糖としてフラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などがあります。
まずは、フラクトオリゴ糖ですが、ショ糖から作られ玉ねぎ、アスパラガス、ごぼうなどに含まれています。
次に大豆オリゴ糖は大豆から作られ大豆やマメ科植物に含まれます。
そして、イソマルトオリゴ糖ですが、ハチミツや味噌、しょうゆに含まれておりトウモロコシから作られることが多くでオリゴ糖の中ではカロリーが高めといわれています。
最後に、ガラクトオリゴ糖は乳糖を原料にして作られ、母乳や牛乳に含まれており、他の糖類に比べて熱や酸に強いという特徴があります。
今回は、数あるオリゴ糖の中でもガラクトオリゴ糖に関する腸内フローラへの影響に関する実験結果がありますのでご紹介いたします。
まずは、オリゴ糖に関する共通の特徴である難消化性という性質です。
通常の糖類は小腸で消化吸収されてしまうことで大腸までは到達しません。その結果、大腸に数多く共生している善玉菌や日和見菌のエサとしての役割を果たせません。
今回の実験はヤクルト中央研究所の長南治氏らのグループによって行われたものです。
そもそも、難消化性の糖類が大腸に到達することで大腸内に共生している微生物がエサとして利用し水素を産生することが解っていますので、ガラクトオリゴ糖を摂取し呼気から水素ガスが検出されれば大腸まで届いたという事になりますからその性質を利用しての実験となります。
具体的には、ガラクトオリゴ糖を含んだ飲料と含まない飲料(プラセボ)の飲用をする二つのグループに分け両グループの呼気中の水素ガス濃度を比較しました。その結果、ガラクトオリゴ糖を含まない飲料を飲んだグループでは水素ガスはほとんど検出されなかったことに対して、ガラクトオリゴ糖を含んだ飲料を飲んだ場合には、飲用後1時間以降から3~4時間後に水素ガス濃度のピークを迎え、8時間後くらいまで高い濃度が検出されました。このことは、ガラクトオリゴ糖が小腸の消化酵素による分解の影響を受けることなく、大腸内の腸内細菌のプレバイオティクスとして機能していることを示唆しています。
さらに、同研究所の出口より子氏らによって行われました、下剤を使用していない便秘気味の健常成人62名を対象にガラクトオリゴ糖の摂取量の差による排便回数への影響についての結果について紹介します。
この実験は、17~45歳の男女62名を4つのグループに分け、ガラクトオリゴ糖を1日当たり2.5g摂取したグループと5.0g摂取したグループでの比較では、排便回数について2.5gのグループでは有意な差はなかったのの、5.0gのグループでは排便回数が3~5回/週のような軽度の便秘傾向者について有意な改善が見られたという結果となりました。
ガラクトオリゴ糖による腸内フローラの変化についても、2.5gのグループと5.0gのグループとでは有意な差が出ていますので紹介します。
まずは、糞便中の微生物の量に(便1g当たりの菌数)については、飲用前の菌数と比較して、飲用2週間目の菌数の増加について両グループともに約2.5倍という結果で差はありませんでしたが、1週目のタイミングでは5.0gのグループでは2.5gのグループの約1.3倍、飲用後2週間というタイミングも約1.3倍という結果になり、ガラクトオリゴ糖の量が多くなることで、菌数が早期に増加することと、飲用後も長い間菌数の増加につながるという傾向が見られます。
腸内フローラ全体の菌数よりも傾向よりも非常に興味深かったのは、常在菌のなかのビフィズス菌の量については、総細菌数の変化の傾向とは明らかに異なり、飲用2週目で5.0gのグループが2.5gのグループの約5倍に増加したという顕著な差であったと同時に、1週目で約4倍、飲用後2週間についても約2倍という結果を示しています。
このような傾向は、ビフィズス菌特有の傾向があるようで最優勢菌であるバクテロイデスや大腸菌(無菌株)などの日和見菌や乳酸桿菌のような善玉菌には有意な変動はなかったことも興味深い結果と言えます。
これらの結果を見てみますと、ガラクトオリゴ糖を5.0g以上毎日摂取することで、腸内フローラでのビフィズス菌の割合が増え、腸内環境が改善するとともに排便回数の改善などQOLの向上につながるという事が言えると思います。
今回の実験については、数あるプレバイオティクスの中でもガラクトオリゴ糖に特化したものではありましたが、自分にあったプロバイオティクスと併せるシンバイオティクスの考えを取り入れることで腸内環境の改善や下剤などの身体に負担のかからない方法でのQOLの向上に役立つのかもしれません。
Posted by toyohiko at 14:19│Comments(0)
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