2020年04月03日
プロバイオティクスと免疫の関係を改めて考える

東京農業大学生命科学部動物共生微生物学研究室の野本康二教授によりますと、基本的に共有しておきたいプロバイオティクスの要件というものの中に、宿主(ヒト)に有益な働きをする微生物という事だけでなく、「生菌として腸内に到達して活性を発揮すること」があるとしています。
つまり、「生きて腸まで届く・・・」が大切であると同時に、胃酸や胆汁酸などの様々などの殺菌作用にも耐性がある優れた菌株ということになります。
その一方で、免疫や生体防御の観点からすれば、プロバイオティクスの作用について、「必ずしも、生菌でなくとも発揮される・・・」ことを示唆する情報もたくさんあることも事実としてあります。
野本康二教授によりますと、免疫細胞とプロバイオティクスとの関係で様々なメカニズムが解明されているそうです。
そもそも、病原菌などが体内に入り込むとマクロファージなどの貪食細胞が取り込んで溶かしてしまうことで、病原体を防御するようなしくみがあるのですが、結核菌、食中毒などにつながるサルモネラ菌やリステリア菌は細胞内寄生細菌といわれ、その特徴として、貪食細胞の取り込んで溶かす能力や殺菌する能力に対しての抵抗性があるばかりではなく、マクロファージなどの貪食細胞に取り込まれた後もその中で増殖が可能な能力を持っている厄介な細菌群もあります。
この生き残りの機能の中に、貪食細胞が菌を溶かすための酵素に対して抵抗性の抵抗性がこのようね特徴に繋がるのですが、乳酸桿菌などの善玉菌の中にもこの酵素の抵抗性を示す種類の菌株もあるのだそうです。
このラクトバチルスなどの乳酸桿菌のこのような特性は、菌株によって様々であることに加え、この作用の強弱が免疫活性作用の強弱に対して高い相関があるという結果が得られているそうなのです。
このように、貪食細胞に作用することで全体の免疫活性に繋がるというメカニズムが示されたのですが、このことは一部の乳酸桿菌やビフィズス菌の形状による特徴に大きく関与を示唆する実験結果もあるようです。
その特徴は、通常は病原因子とされる繊毛構造を持っているという事です。飲料に利用されているL.カゼイ・シロタ株などもその特徴をもった菌株の一つといわれています。
皮肉なことに、病原体と似た特徴を持っているからこそ免疫システムに強く作用するということなのかもしれませんし、その特徴があるからこそヒトの身体に有用な働きをするプロバイオティクスはお腹の中に定着できないという痛しかゆしの状況になっているのかもしれません。
当然、これらの菌株のように、腸管の上皮細胞や粘液分子への接着性が強いことで、一部の菌株では生菌の状態でなく、死菌であっても免疫活性に繋がるという事もわかっているようですが、生きているからこそ直接的な免疫活性作用だけでなく、腸内環境の改善を通じてまだ未解明な様々な宿主へのメリットにもつながっているのだと思います。
いずれにしても、自分自身のなりたい健康の姿にあった菌株を選んで、プロバイオティクスとして毎日取り入れる必要性という事には変わりはないということになりますね。