2020年08月08日
プレバイオティクスと胆汁酸

「胆汁が濃い人は若くて活動的だ・・・」これは古代ギリシャの医者であるヒポクラテスが残した言葉とされています。
胆汁といわれても、ピンとこない方も多いかと思いますが、熊の胆やすっぽん料理に出てくる胆のう酒であれば聞いたことがある方もいるかもしれません。
熊の胆のような動物の胆のうを食する習慣はギリシャからといわれており、古くからの中国では、熊の胆は胆汁の分泌を促進し、肝胆の機能向上のための漢方薬としても利用されてきました。
そもそも、胆汁は肝臓でコレステロールなどを原料に作られ、1日に600ml~1000mlの量が胆のうに送られ約10倍に濃縮され貯蔵されています。
慶應大学の渡辺光博教授によりますと、胆汁はエネルギー代謝に大きく関係しており、腸(小腸)の消化を助け、脂肪に付着し消化と吸収を促し脂肪燃焼を促進させる働きを担っているといわれています。
また、胆汁には脂肪の消化・吸収を助けるだけでなく、肝臓の持つ解毒作用と協力し老廃物を体外へ排泄する働きや胃酸と同様に強力な殺菌効果もあり外敵から身を守ってくれる役割も持っています。
赤血球は約120日で古くなり役目を終えると、肝臓で血液の成分であるヘモグロビンが代謝され、その一部がビリルビンという色素になります。このビリルビンを水に溶けやすい形にして胆汁と一緒に腸内に出し、便とともに体外に出て行きます。
胆汁はすべて便と一緒に体外に排泄されるわけではなく、一部は腸内で吸収され再利用されるのです。その利用の一つが血液中に存在する胆汁酸です。
この胆汁酸は細胞を活性化し脂肪細胞を燃焼促すことで代謝を上げる役割をしていますので、「肝臓で作られる新しい胆汁酸」が血液中に入り込んでいく事が、脂肪の代謝促進に大きな効果をもたらすといわれているのです。
しかし、「肝臓からつくられる新しい胆汁酸」の一番の阻害要因があるのですが、それが「便秘」です。
胆汁酸は便と一緒に排出されてしまいますが、便秘によって古い胆汁酸が腸内に溜ってしまい胆汁酸の持っているエネルギー代謝を活性化させる役割を弱くしてしまいます。
また、古い胆汁酸は、大腸がんや肝臓がんの危険因子とも言われていますので胆汁酸も含め便秘などの腸内の滞留物があることは腸内腐敗を起こし様々な健康リスクに繋がりますので気を付ける必要があります。
そこで、有効なのがプレバイオティクスとしても知られています食物繊維です。
渡辺光博教授によりますと、特に水溶性食物繊維で知られるβグルカンやポルフィランなどを積極的に摂取することで、便秘の解消とともに腸内に滞留した古い胆汁酸が排出され、肝臓が新たな胆汁をつくるサイクルがうまく回るようになり脂肪燃焼のメカニズムが効率よく働くようになるのだそうです。
特にβグルカンは古い胆汁酸を付着させ便と一緒に体外に排出する役割をしてくれるので、肝臓での新しい胆汁をつくる機能が改善されることが解っているそうです。
βグルカンとともにキノコ類、さらにゴボウなどの不溶性食物繊維やレジスタントスターチを併せるとさらに効果があるとも言われています。
βグルカンを含む食品で代表的なものの一つはもち麦といわれていますし、ポルフィランは海苔に含まれていますので、積極的な摂取を心がけることは、脂肪燃焼だけではなく腸管の保護にも良いと考えられています。
食物繊維もプレバイオティクスとしてだけでなく、身体にとって二重三重の効果も期待できそうです。