2020年08月22日
ストレスのメカニズムを考える

現代において、ストレスは多くの人が抱えている精神的かつ社会的な課題とされています。平成28年国民生活基礎調査では48%以上の人が悩みやストレスがあり、その原因の29%が人間関係といわれており、その半数に近い14%が家族、家族以外が15%、という報告もあります。
東邦大学医療センターの小山文彦教授によりますと、ストレスは万病のもとになり、長期間のストレスによって癌の発症率が11%上がるという報告もあるようです。
人間はストレスがかかると副腎からストレスホルモンであるコルチゾールなどが分泌されます。これらのストレスホルモンが心臓に心拍数を増やすための働きかけを行います。さらに、自律神経を刺激し、血圧の上昇が起こります。
ストレスの原因が一つの場合は、その原因を取り除くことで解決しますが、複数ですとストレスホルモンの増加につながり脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まったり、肝臓内の糖質が血中に放出され糖尿病につながるような事例もあります。さらには、蕁麻疹、アレルギー、腰痛などもストレスが原因になって起こるケースがあるそうです。
そもそも、ストレス反応は人生の節目、日常の変化など「いつもと違う・・・」という事に対して起こるといわれています。
その結果、「不安」や「緊張」を引き起こし、ストレスホルモンを促してしまうのです。
また、感じやすい人とそうでない方もいますので、体調面や行動面での二つの視点で兆候を早めに認識しておくことが大切です。
まず、体調面では睡眠、食欲、疲れ、頭痛、風邪をひきやすいなど・・・いつもと違う感覚が無いか・・・。続いて、行動面では、集中力の低下、休日明けの不調、口数が少なくなった、挨拶ができない、付き合いが悪くなる、細かいことに拘り過ぎる、酒量や酔い方、怒りっぽくなるなどの変化に注意しておくと良いといわれています。
これらの変化を感じるなど自分のストレスを早めに把握することが大切になりますが、そのストレスをうまくリリースすることが重要です。
具体的なリリースの方法として一番有効とされるのが「睡眠」です。睡眠は脳の休息の機能を持っていますので良質な睡眠は非常に重要です。良質な睡眠をとるコツとして4つのことを心掛けるとよいとされています。
まず一つ目は、朝は一定の時間に起床することを心掛け、太陽の光で「体内時計を整える」ことです。二番目は、日中は活動的な生活を送り、適度な疲労感を感じるようにするとともに、運動することで幸せホルモンであるエンドルフィンの増加を促すことです。
3番目としては、夜はリラックスを心掛け、睡眠に対する移行期という感覚を持つことが大切だそうです。この移行期を3時間取れることが理想的とされています。最後に、休日とはいえ起床の時間は変えずにいったんは起きて昼寝を活用する、しかし、昼寝は2時間以内にする・・・などが有効になると考えられています。
ストレスリリースとしての「睡眠」も大切ですが、そもそものストレスを軽減するという工夫もそれ以上に大切です。
ストレス軽減のためには、自分の思考のパターンを知ることで、より良質な見方を方向付けるための工夫をしていくことが有効とされています。
例えば、挨拶されたが素通りされたことに対して、「嫌われたに違いない・・・」と勝手に決めつけてしまう。ちょっとした言い間違いだけなのに、「完全に失敗だ、何もかも終わり・・・」と悲観的に悩んでしまう。失敗に対して、「自分が悪い・・・」と何もかも自分のせいにしてしまいがち・・・。過去にあったミスに対して、「また繰り返してしまう・・・」と考えてしまう・・・。というような事に心当たりがないでしょうか。
前出の小山文彦教授によりますと、これらに対する対処方法には、「自己肯定」「自己効力」「首尾一貫」「自己回復力」の4つのアプローチを推奨しています。
まず、「自己肯定」ですが、自分の特徴を肯定的に言い換える、見方を変える、ダメな理由を考えるのではなくどうしたらうまくいくのかという事のみを考えどんな自分も受け入れて肯定してみることが有効になります。
次に「自己効力」ですが、ここまで努力してきたのだから・・・もう少し頑張れる・・・というイメージを大切にすることで成功体験を自身に積み上げることが出来るようになります。自分にアドバイスをしてくれる人を見つけておくことも有効な手段の一つです。
「首尾一貫」という考え方ですが、「目の前の課題が、自分にとってどのような意味を持つのかを常に考える」。そして、「自分の身の回りの状況を出来るだけ客観的かつ正しく把握する」。さらに、「お願いする・・・」「お願いされる・・・」という「頼るチカラ」を大切にし、孤軍奮闘してしまうことは決してプラスにはならないという認識を持つ。
最後に、「自己回復力」ですが、将来に対しても悲観ばかりするのではなく「まんざら悪くない・・・」という感覚です。この感覚がストレスを跳ね返すチカラにつながるとされています。興味や関心を広く持つことでも得られるそうです。
先ほどの4つのアプローチはいわゆる「精神的な対処」といわれる方法になりますので、「思考の癖」との戦いに悩み留まってしまうこともあると思います。そんな時は、「考えるより、行動しよう・・・」で、「行動的対処」にも目を向け実践してみると良いかと思います。
具体的には、一気にやろうとするのではなく、段階的に取り組むというようなスモールステップを意識する。家族、友人、同僚などに打ち明ける。断る・やめる・遠慮するなど一見ネガティブに見えるような行動を危険回避の意識をもって決断・明言するというような事です。
この二つの対処方法を比べてみると、行動での対処の方が取り組みやすいことが多いのかもしれません。
これらの、ことはストレスがあるかないかに関わらず、意識してみると良いのかもしれません。