2020年09月04日
ライフスタイルと健康について考える

近年、急速に関心が高まってきた「免疫」という仕組みについて、「男女の差があるのでは・・・」という話題が研究者の中であるのはご存知でしょうか。
例えば、生殖器に関係しない癌は男性の発症率が圧倒的に多いことや、自己免疫疾患など免疫に関する疾患は女性の発症率が高かったり、さらに、ウィルスによる上気道感染症がSARS、MERSなどの事例を見ても男性の方が2倍以上重症化する割合が高いなど、様々な報告があるようです。
東北医科薬科大学薬学部病態生理学教室の宮坂智充氏によりますと、「「女性らしい免疫」と「男性らしい免疫」というものがあり疾患によってはプラスに働いたり、マイナスに働いたりすることがあると理解しています・・・」としながら、実際の研究で、外敵からの情報に対しての最初の情報解析機能でもある樹状細胞の状態の男女の比較について、喘息症状のかたの樹状細胞の数の変化や機能について男女差が見られたという報告もしています。
確かに、男性ホルモン、女性ホルモンのように、明らかな性差による身体的特徴の違いがあることも事実ですが、「免疫システム」への影響についてはまだまだ未解明なところが多いというのが現実のようです。
前出の東北医科薬科大学医学部医学教育センター長の大野勲教授によりますと、身体的な性差というよりも、取り巻く社会環境の違いや、健康に対する生活の違いは見逃せない要素の一つ・・・としています。
かつて、成人病といわれた三大疾病の脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病も現在は、「生活習慣病」と表現が変化してきています。その理由は皆様もご存知のようにこれらの疾病は加齢によって発症するのではなく、日頃の生活習慣によって発症することがわかってきたからです。
つまり、多くの疾患はその人の癖や習慣も含めて社会的な環境が大きく影響するという事なのかもしれません。
例えば、国民健康・栄養調査の結果によりますと乳酸菌を摂取するなど腸内環境を整えようという習慣を心掛けている人は男性よりも、女性の方が多い傾向があるようです。
野菜や果物を積極的に摂取するように心がけている人は女性に多い、女性の方がストレスを感じやすい等・・・
更に、厚生労働省による朝食の欠食率の調査などでは、既婚・未婚の違いがくっきりと出ています。それに加えて既婚年齢層である40代50代では男女の差もあります。この場合は性差という事だけではなく、ライフスタイルによる環境の違いが、現状では男女によって振り分けられている。という事の表れと考えることが出来るのではないでしょうか。
現実的に生活習慣など様々な環境因子が、男女の社会的認知に対する適応と相まって社会的性差のようなものをつくり出しており、「結果的に疾病の発症のし易さ・・・」という形で表面化している可能性も否定できないという事なのだと思います。
確かに、フィジカルな性差からくる様々な疾病リスクに関するものは、これから様々な研究を通じて明らかになってくるかと思いますが、自分自身の生活習慣という意味での見直しはした方が良いといえるのではないでしょうか。