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2020年04月11日

快食・快眠・快便を改めて考える

快食・快眠・快便を改めて考える


 健康の大切さは、誰もが考えるものかと思いますが、それぞれの健康に関するアプローチは様々です。しかしながら、病気や怪我につながらないという平穏な状態というように「健康」を考えるのであれば、食事、睡眠、良好な排便という三つのことは思っている以上に大切なことになるのでないかと思います。

 まずは、食事ですが人間の身体は、食べたものによって構成されているという事は言うまでもありません。
現実的には、腸内細菌が産生してくれる様々な栄養素もありますので、食べたもの以外にも補ってくれるようなものもありますが、この腸内細菌からの恩恵も、口から入った食べ物からいただく栄養素の中から、消化管内の共生微生物にとって必要な栄養を摂るという関係性があるからこそ・・・という事になりますので、「食べ物が大切」ということについては、変わらないと思います。

 この食生活については、社会環境の変化に伴って様々な変化が見られます。

 厚生労働省の「国民健康・栄養調査」には、所得と食生活に関する調査結果が報告されていますが、近年の傾向としては、所得と炭水化物の摂取量との関係に於いて逆相関の関係があるというような結果もあるといわれています。言い換えると、低所得になるほど野菜や肉の摂取量が少なく、手ごろな価格でお腹を満たす・・・という意味も含め、ファストフードの利用やライフスタイルなどの社会背景も影響し、炭水化物や脂肪の摂取量が多くなっているのかもしれません。

 ライフスタイルという意味で考えると、朝食の欠食率にも年代や性別、世帯状況などによって特徴が表れています。

 同じく、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」の平成16年のデータによりますと朝食の欠食率が一番高いのは、20代の男性で34.3%になります。さらに世帯になりますと単身世帯では65.5%と飛躍的に上がってしまいます。これは、全体の平均の10.5%からすると吐出しているといわざるを得ません。
 
続いて二番目はと言いますと、30代男性の25.9%で、単身世帯は41.4%となり、20代男性ほどではないですが同じような傾向が見られます。さらに、20代の女性を見てみますと、22.0%と20代30代の男性に続いてワースト3の結果になりますが単身世帯の場合は29%と少し差が縮まってくる傾向が見えてきます。

 これらの状況を見てみますと、年代別収入やライフスタイルの影響が非常に強く出ていることと、慢性的な睡眠不足もあり「少しでも多く寝ていたい・・・」という理由で朝食を食べないというようなことや、職場環境も含めた生活習慣が大きく関わっているような気がします。

 続いて、睡眠についてです。睡眠に関しては、大切だという事はわかっていてもないがしろにされがちな要素の一つでないかと思いますので、ここでは、睡眠中に行っている身体の動きをここで紹介しておきます。
 
 多くの場合、睡眠中は身体も寝ていると考えがちですが一部の器官は睡眠中に活発に動いているといわれています。その代表的な器官が脳と腸です。

 脳は、記憶の再整理などを行っていると考えられており、夢のシーンが突然飛んでしまうことなどはこのためだといわれており、コンピューターで言えば、バックアップとスキャンニングによる最適化のようなものなので、睡眠は快適な思考のためにも、メンタルヘルスの面でも大切なものになります。

 腸に関して言えば、通常の蠕動運動ではなく大蠕動という、大きな動きを睡眠中に行っています。子どもを見ていると、「寝ているときにおならをよくする・・・」という経験はよくあると思いますが、これも大蠕動がしっかりと行われている状態だからこそで、大人も含めて睡眠中の方におならが多く出るのはむしろ正常だと考えていただいて良いのです。

 この大蠕動は、お腹の中の大掃除のようなものになります。何を掃除するかといいますと、腸管の内壁にこびりついている古い組織をはがしたり、そのはがれた組織や腸が独自に排出しようと判断した腸内細菌などです。

 このことは、便の成分の多くが腸内細菌とはがれた腸管の組織という事からすると納得できることでもありますし、朝一番に便意をもよおすということともつながっていることを理解していただけると思います。「腸がきれい・・・」という事はこの大蠕動がうまく機能しているということになります。

 この、朝一番に快適に便意をもよおすようにするために大切なことは、「就寝直前にものを食べない・・・」ことです。就寝前に食事をしてしまうと消化器官が消化吸収モードになっているために大蠕動がうまくいかなくなってしまいます。できれば、寝る2時間前には何も食べないという習慣が、快眠と快便の両方につながっていくと思いますので心がけてください。

 もちろん、「便は身体のお便り・・・」というくらいに、日々の体調に関する情報を知らせていただけるものです。色、形状、臭いなど・・・身体の免疫システムの6割から7割を占めるといわれる腸内環境を表すメッセージになりますので、排便後に自分の便を確認する習慣は大切です。

 さらに、食事と睡眠の関係を考えた場合に、より良い睡眠にはメラトニンという物質が必要だといわれています。このメラトニンは、必須栄養素であるトリプトファンが時間をかけてセロトニンになり、さらにメラトニンになります。
 トリプトファンは、乳製品や肉、卵などのたんぱく質を多く含む食品に含まれていると言われていますので、朝食にたんぱく質をしっかり摂ることも、よりよい睡眠につながってくるというわけです。

 この快食・快眠・快便という健康における3つの基本的要素もお互い密接に関係しあっていますので、どれが欠けても健康にはマイナスになってしまうことを理解しておくと良いかと思います。




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Posted by toyohiko at 10:17│Comments(0)身体のしくみ
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