2021年01月23日
睡眠不足は身体に何をもたらすのか・・・

2016年のイギリスのランド・ヨーロッパという非営利研究機関の報告によりますと、睡眠不足が招くと予想される、交通事故や欠勤、疾病などによる労働時間の損失などを総合して評価したときに、日本の損失額はGDPの2.92%にあたる1,380億ドルという試算が発表されました。
また、平成30年(2018)「国民健康・栄養調査」によりますと日本人成人の21.7%が慢性的な不眠や休養が十分とれていないという結果も出ているとともに、イギリスではこの50年間で、平均睡眠時間が2時間も減少しており、 7割の人が良く眠れていないと感じているというような報告もあるほど、睡眠に対する悩みを持つ人が多いことを表しています。
その一方で、「眠れない・・・」「寝付けない・・・」というような悩みについては、なかなか周囲の理解も得られなかったり、長時間労働や長時間通勤などの理由で、後回し・・・にしがちになってきた人も少なくなかったりするのではないでしょうか。
そこで、「たかが睡眠不足・・・、寝れば元に戻る・・・」という事だけではなく、習慣化してしまった睡眠不足によってもたらされる身体的な症状などについて考えてみたいと思います。
人間の身体の中には、眠っている時の方が、活発に活動している器官は二つあります、その二つが「脳」と「腸」です。
「腸」の場合は、大蠕動という通常の蠕動運動よりも大きな動きをすることによって、腸管内のリフレッシュをしていますし、「脳」も海馬を中心とした記憶の整理と様々な修復をしているとされていますので、そういった意味でも睡眠不足は「脳」と「腸」に顕著に症状が現れるのかもしません。
イギリスのアミール・カーン医師は、普段ぐっすり眠れているという20代男女2名づつを48時間の間睡眠を制限した状態で、様々な実験をい、様々な身体的自覚症状の確認を行いました。
一般的に、思考力や判断力の低下という事は多くの人が予想される事かと思いますが、特に判断力という点では「リスクを選択しがち・・・」という傾向が明らかに出るとのことです。
ノーサンブリア大学ジェイソン・エリス教授によると、睡眠不足によってリスクを選択しがちで、ギャンブル的な行動や、ギャンブルそのものをしたくなる・・・飲酒、喫煙なども睡眠不足の時の方が、コントロールが効かなくなりチェーンスモーキングの状態や深酒を助長する要因になるとのことです。
また、午後10時から、午前3時の間はオンラインで賭け事をする人が増えるという事が言われていますが、これも睡眠不足との関連性を考える必要があるかもしれません。
さらに、深夜0時から朝6時までのオンラインでの買い物が多いというデータもあるようで、いわゆる「衝動買い・・・」につながっているケースも少なくないと考えられています。
という訳で、「一晩寝かす・・・」という表現がありますが、まさにその通りで、「眠い時の決断は」ロクなことが無いという意識をもって、一晩明けてから決めることもいいのかもしれません。
また、「物事を諦めやすい状況に陥る」とも言われています。これは、 睡眠不足が行き過ぎると、アドレナリンの分泌が弱くなり集中力を保つことが難しくなってしまうからだと考えられています。
さらに、興味深いのは「痛みに耐える感覚が25%程度低下する・・・」という事です。これは、ドーパミンの減少により痛みを感じやすくなる、頭頂葉の活動が活発になるためと言われていますが、腰痛や関節炎を訴えるような人は睡眠不足を疑う必要があるそうです。
特に、腰痛などは椎間板や筋肉に損傷などが無いにも関わらず不調を感じる人も数多くいると思いますので、その場合は、睡眠不足やストレスの軽減を心掛けることで、日常のQOLの向上に大きな役割をする可能性があります。
近年では、睡眠不足に対して、「いつも眠い・・・」とか「感情の起伏が激しくなりコントロールが出来ない・・・」「思考力・判断力が・・・」というような症状だけと考えがちですが、慢性的な全身の痛み、過食、肥満、糖尿病や高血圧の原因とも言われてるとともに、4時間以下の場合は、免疫システムの異常に繋がるというような様々な報告もありますので、自身のライフスタイルと共に「健康にとって最も大切なもの・・・」の一つとして考え直してみてはいかがでしょうか。
Posted by toyohiko at 11:17│Comments(0)
│身体のしくみ