2021年05月22日
激辛ブームの謎

「激辛」という言葉の響きのなかには、何となく「美味しいもの・・・」というイメージをもつかたも多いのではないでしょうか。はじめから辛いものは全然ダメ・・・という方はさておいて、「時々、無性に食べたくなる・・・」という衝動に駆られるのが「激辛」なのかもしれません。
以前にもご紹介させていただきましたが、そもそも「辛み」というものは人間の味蕾が感じる味覚とは異なる感覚器によって感じています。その感覚器は痛点になりますので、行ってみれば、「辛み」は、「痛み」という事になります。
その「痛み」が、何故、「時々、無性に・・・」と繰り返したくなるのでしょうか・・・?
これには、前回紹介しましたドーパミンやβエンドルフィンの脳への働きかけのメカニズムが大きく関わっているという事なのです。
青砥瑞人氏の著書「BRAIN DRIVEN」によりますと、物理的痛みには慣れることでストレスは低減するが、心理的痛みには慣れることにはならずにストレスが増幅しやすいという研究結果もあるそうで、さらに、物理的な痛みには「実際の危険の有無」を脳が学習することで、「痛み」という信号と「快楽」とが同居するという状態になるというのです。
「痛み」の信号と「快楽」と言われるような脳の報酬系との関係をもう少し探ってみますと、痛みを感じるときに痛みを和らげるために、セロトニンやドーパミン、そしてβエンドルフィンなどの神経伝達物質が放出されているというのです。
また、「激辛」のように何度も「強すぎなく・・・」且つ、「危険でない・・・」という痛みを体験することで、脳自身が「害がない・・・」「危険でない・・・」という学習をしていくために、「痛み」の感じ方は緩和されるのに対して、「快楽」としての報酬系への働きかけの方が上回ってくるそうなのです。
人によっては、「もっと辛いものに挑戦・・・」という心理は、このバランスを埋めるために、行動が次第にエスカレートしていく現象ともいえるのかもしれません。
このような、メカニズムはランナーズハイなどの運動による負荷に対しても同じことが言えるそうです。
さらには、「何かを成し遂げようと努力する・・・」場合にもそのような状態を乗り越えるためのエネルギーの役割をしているのがドーパミンとも言われています。
つまり、「苦しさを乗り越えてこそ・・・」という言葉にも、脳内のメカニズムとしての裏付けがどうやらあるようで、「達成感・・・」と言われるものも、乗り越える壁の大きさによって「脳への報酬」の量が変化していくのかもしれませんし、「これくらいなら乗り越えられる・・・」というスモールステップによる脳への学習を繰り返し行っていく事で、さらなる大きな壁を乗り越えていけるようになってくるのだと思います。
もちろん、「激辛」へのチャレンジのように、「危険ではない・・・」という心理的安全性や、挑戦したいという内発的な動機が大切であるという事が言うまでもありませんけどね・・・