2021年06月12日
プレバイオティクスとしての食物繊維を考える

食物繊維の大切さについて、健康の維持増進のためにも有効であるということは言うまでもないと思います。ついては、「野菜を中心に食べることを意識して・・・」というかたも多いかともいます。
また、食物繊維が腸内細菌にとって有効な栄養分としてのプレバイオティクスという認知も高まりつつありますので、食物繊維を積極的に摂ることで「便秘の解消・・・」などのお腹の健康とのつながりをもって意識している方も増えてきていると思います。
近年の食物繊維の摂取状況の推移は、1955年の22.5gから2013年の14.2gと3割以上減ってきているというのが現状です。日本人の食物繊維の目標摂取量は男性20g、女性18gといづれにしても足りていないという現状があるようです。
大妻女子大学人間生活文化研究所の青江誠一郎教授によりますと、日本の食生活の上では、食物繊維に対して最も寄与率が高い食品は精白米で次いでパンという事になっていますが、1955年と比較しても7割も減少していることと加え、食物繊維にも種類があり、その種類を考慮しても様々な穀類の摂取量を増やしていくことが食物繊維の摂取量を増やしていくための一番有効な方法として提唱しています。
しかしながら、近年では炭水化物が肥満の原因にというイメージが先行しすぎてしまい、穀類=糖質という考え方を持つ方も多くなり、「ごはん抜き」になってしまうことで、本来必要な食物繊維まで減らしてしまうケースは少なくないという事を耳にします。
実際に、炭水化物ダイエットを始めたことで便秘の症状が出たりする事例も多く耳にしますが、これは食物繊維が足りなくなってしまった典型的な事例と考えることもできます。
だったら、どうすれば良いの・・・?
という事が、一番の関心事になると思いますが、日常摂取している糖類に直接つながってしまう糖質と食物繊維を多く含む糖質とを区別して摂取の状況をコントロールしていく事です。
糖類に直接つながってしまう糖質に関して言えば、ドレッシングをはじめとする、多くの市販の調味料などの内容成分を注意して見ていただくことが大切かとおもいます。多くの場合に、様々な糖類を使用することで、「おいしさ・・・」につなげていますので、そのことそのものが悪いわけではありませんが、全体的に見てみると過剰になってしまうこともあるという意識は必要です。
身体にとっては、食後のデザートで摂る糖類も調味料で摂る糖類も同じです。「知らず知らずのうちに・・・」を注意することが良いのかもしれません。
次に、穀類に含まれる食物繊維についてですがプレバイオティクスの観点から考えると、水溶性食物繊維や不溶性食物繊維など様々な食物繊維があり、当然のことながら腸内の「常在菌の好みのエサ」というようなマッチングがうまくいかない事には腸内細菌の代謝物である短鎖脂肪酸の効果を享受することはできないという事になります。
青江誠一郎教授によりますと、全粒小麦に代表される不溶性食物繊維は腸疾患の予防や改善が期待されていることに対して、大麦やオーツ麦に含まれる水溶性食物繊維は代謝疾患の予防や改善に対する有効性が指摘されてきましたが、研究が進むにつれて小麦ふすまなどの不溶性食物繊維を豊富に含む食品の摂取による、糖尿病や冠状動脈疾患のリスクの低下が報告されるなど、水溶性や不溶性などの食物繊維による機能分類だけでは説明がつかないこともあるとしながらも、主食穀物からの食物繊維の積極的な摂取は有効な手段の一つといえるのではないでしょうか。
食物繊維の摂取というと「野菜をたくさん摂る・・・」となりがちですが、レタスに含まれる食物繊維の量は100gあたり1.1g(不溶性食物繊維1.0g、水溶性食物繊維0.1g)になりますので、思っているより少なく、白米の2倍強、玄米の3分の1の量に当たります。
サイズにもよりますが、100gで1玉の4分の1以上という量になりますので、1gを摂取するためにサラダなどで考えてもなかなかのボリュームになってしまうのではないかと思います。また、そのままで食べればいいかもしれませんがドレッシングなどを使うことで、計算外の糖質を摂取してしまうことにもつながりますし、毎日となるとなかなか大変ということもあるかもしれません。
大麦やもち麦に多く含まれるとされる水溶性食物繊維の一つであるβ-グルカンをつかったマウスでの実験でも、回腸内の酢酸や酪酸の量が優位に上昇しているという報告があります。つまり、腸内細菌の代謝物である短鎖脂肪酸に着目する必要性が注目されているのです。
穀物別に見てみると最も食物繊維が多いとされてるのがもち麦です、大麦のなかでも特に食物繊維が豊富で、通常の押麦では、可食部100gあたりの食物繊維含有量が9.6g(水溶性食物繊維6.0g、不溶性食物繊維3.6g)なのに対し、もち麦は可食部100gあたりの食物繊維含有量が12.9g(水溶性食物繊維9.0g、不溶性食物繊維3.9g)と食物繊維が多いことがわかります。
また、野菜のなかでも食物繊維が多いことで知られるゴボウでも5.7gなので、その含有量の多さを考えれば、様々な工夫をしながら食物繊維を多く含む穀物を食事に積極的に取り入れて、腸内細菌の代謝物である短鎖脂肪酸を増やしていくメリットは十分にあると思います。