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2021年06月25日

「やる気」のメカニズムを考える

「やる気」のメカニズムを考える


 皆さんは「やる気」は害悪・・・、「やる気」という言葉は、出来ない人が創り出した言い逃れの方便・・・、という考え方についてどう思いますでしょうか。

 書店に行けば、「やる気」とか「モチベーション」に関する様々な書籍が出版されているという現実からすれば、「やる気」というものは非常に大切なものであり、特にチームとして結果を導き出すためには非常に重要なものであるということは共通の認識であるかたも多いかと思います。

 東京大学 薬学部 池谷 裕二氏によりますと、脳科学的な考えかたからすれば、「やる気」は脳の側坐核が活性化することで生まれることが解っているそうです。逆に言いますと側坐核を意図的に活性化することでやる気を出すことが出来るという事になります。

 「そんなことが出来るわけがない・・・」と思うかもしれませんが、近年の研究では意識的に血圧を下げたり、脳のα波を出すというような、自律神経に関わる今まで不随意運動と考えられていたものもコントロール可能になるというのです。

 そして、「コントロールしたいものの状態を知る」ことで一定のトレーニングをすれば、血圧を測り続けた状態で血圧を下げるとか、脳波計を使うことでα波を出せるというような実験結果もあるそうなのです。

 このメカニズムはバイオフィードバックと呼ばれ、これまでも知られている生体反応の一つです。

 しかし、「やる気」と側坐核の活性化の関係を考えた時には、バイオフィードバックを会得するための一定のトレーニングをするための「やる気」が必要になるために、「やる気」を使って「やる気」を出す・・・という大きな矛盾にぶつかってしまいます。

 しかしながら、こういったある種馬鹿げたことでもやってみようという研究者は世の中には沢山いるようで、「やる気」を出すためのバイオフィードバックについては、「楽しいことを想像する・・・」事が一番効果的な事が判明する、という違った意味での大きな成果を導き出しています。
 更には、このようなバイオフィードバックを続けることで、性格も「前向きな人」に変化するというのです。

 ただし、ここで重要なのは「楽しい」という漠然としたイメージではなく、場面や状況を明確にイメージすることが効果的であるとしています。

 ドイツの心理学者エミール・クレペリンによると「やる気」は行動の原因ではなく結果である、よって、やり始めない限り「やる気」は出ないという考えから、このような心理現象を作業興奮と名付けています。
 
 また、イリノイ大学イブラヒム・シネイらによる実験によると、「出来る」として取り掛かるよりも「出来るかな・・・?」「やるために何が必要だろう・・・?」と自問した方が、モチベーションが上がり、成果につながりやすいという結果を報告しています。
実験によると、両者の結果には50%もの差があり、スポーツなどの瞬発力が必要な場面はともかくとして、「やる気の欠点は一過性」であり、「継続性の無さ」を指摘しています。

 また、「やる気」に大きく関わってくるのは「将来得るべきものに対する選択」であったりもします。選択の仕組みとしてよく知られているのが、「何をしたいのか・・・」という目的手動型選択と「失敗したくない・・・」という消去法型選択になりますが、その両者ともに大切なものです。

 しかしながら、「現在の子どもたちが大人になった時には、65%の職業は無くなっている」というような時代の移り変わりの早い現代に於いて、夢を抱くことは「現在という狭い可能性に自分自身を封じこめること・・・」になりかねないとも言えます。そうなると、従来の二つの選択についての考え方は通用しなくなる可能性が高いと言わざるを得ません。
だからこそ、将来どんな世界がやってきても順応できる柔軟性を磨くことや、その原動力となる好奇心(楽しむチカラ)が適応力につながっていくのであれば、「楽しい」を大切にすることは重要なのかもしれません。

 ここで、注意すべきことは「楽しい」をイメージするときには、「楽しい」に至るプロセスにつながっている、失敗やストレス体験も併せてイメージすることが、ストレス耐性にもつながると言われていますので、そこへの意識も大切です。

 「楽しい」から「笑う」のか・・・?
 それとも、「笑う」から「楽しい」のか・・・?

 実力があるから「自信」がついてくるのか・・・?
 自信が有るような、表情、姿勢、立ち振る舞いを意識することで「自信」が生まれるのか・・・?

 バイオフィードバックという考え方は、「本当は、やればできるんだけど・・・」というようなセルフハンディキャッピングや、アンガーマネジメントでよく言われる表情フィードバックのようなものも、脳に対するスイッチが「身体」になっているという事がわかれば、行動を変化させることで「やる気」も含めた感情と上手く付き合うきっかけになるのかもしれません。






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