2021年09月03日
お酒が「飲める」「飲めない」の違いを考える

お酒については、「酒は百薬の長」という言葉があるように、適度に飲むことで健康にも良いと考える人も多いと思いますが、この「適度」とはどの位になるのでしょうか。
その一方で、最近では、新型コロナウィルス感染拡大に対する予防の観点からも、自宅での飲酒増加に伴い、「アルコール度数の多いお酒の多飲」などの依存症へのリスクの増加など、ある種の社会問題とも言えます。
札幌医科大学の齋藤利和名誉教授によりますと、摂取したアルコールは、通常の食品とは異なり、消化されずに飲酒量の90%がそのまま消化管で吸収されるとされています。
その90%のうちの約20%が胃、残りの80%が小腸上部から血管に吸収されますが、残りの10%のアルコールは、汗や呼気・尿などや他の臓器で代謝されます。その速さは、1~2時間程度と言われていますので、食べ物と比較すると非常に速いとされています。
消化管から吸収された、アルコールは肝臓に運ばれ、アルコールデヒトロゲナーゼ(ADH)と呼ばれるアルコール脱水素酵素によって、主成分のエタノールを分解し、アセトアルデヒドという非常に毒性の強い物質をつくります。
このアセトアルデヒドは、顔が赤くなったり、フラッシング反応と呼ばれる、吐き気や、頭痛、動悸などの不快な症状を引き起こします。
さらに、このアセトアルデヒドは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)と言われるアルデヒド脱水素酵素によって酢酸に変換され無害化するいうサイクルを経て代謝されます。
ここで、許容量を越えるなどの理由で処理しきれないアルコールやアセトアルデヒド再び体内を循環して肝臓に回ってくるというサイクルを繰り返すことになりますが、アセトアルデヒドが体内を巡るころでフラッシング反応が酷くなり、いわゆる二日酔いの状態になってしまいます。
また、アルコールの多飲の影響は睡眠の質にも大きく影響しますので、睡眠による脳や腸のメンテナンス効果へのマイナスなど健康全体に大きな影響を与えると言えます。
「アルコールを飲みすぎると、便が緩くなって・・・」という方も多いかもしれませんが、これも過度なアルコールを毒素と感知してしまうことによってなどの複合的な原因で起こると考えられていますが、「アルコール消毒」と言われるくらいですから腸内フローラには大きなダメージにつながることは否定できません。
ここで、注目したいのは同じお酒の量を飲んでもフラッシング反応が現れる人とそうでない人がいるということです。
齋藤利和名誉教授は、このフラッシング反応の有無については生まれつきの体質によるため、訓練や慣れで変わるものではないと言います。
アセトアルデヒドを分解するALDHにはⅠ型と2型との二つの種類があり、アセトアルデヒドを分解する役割は主に2型が担うとされています。
しかし、日本人の約1割がこのALDH2と呼ばれる2型アセトアルデヒド脱水素酵素が全く働かない非活性型であることが解っているそうです。
さらに、3割の人は低活性型と呼ばれ、慣れることで「多少は飲める・・・」ようにはなりますが、「飲めるようになった・・・」のではなく体内のアセトアルデヒドの代謝能力は変わらない為に、アセトアルデヒドに対しての反応が鈍くなるだけで本質的には変わらず、感じにくくなる分、身体への負荷がかかってしまいアルコール依存症など健康を害する可能性が広かると考えた方が良いとも言われています。
特に、このタイプはアセトアルデヒドが体内にたまりやすいために肝臓などの臓器に害が出やすいとも言われていますので、注意が必要です。
齋藤利和名誉教授は「通常のアルコール代謝機能を持っている日本人の節度ある適度な飲酒量として1日当たりの平均純アルコール摂取量を20g程度・・・」と定義しています。日本人の4割が、「ほとんど飲めない・・・」か、「少しなら飲める・・・」という生まれつきの許容量があるとう事を知ったうえで、自分自身にとっての「適度な量」を考えながら、「美味しく楽しいお酒・・・」にしたいものですね。