2021年09月10日
プロバイオティクスの継続的な利用について考える

「育菌」や「腸活」と言われるようなお腹の健康について注目される中、プロバイオティクスの腸内環境に対する健康効果や、さらには近年注目されつつある脳腸相関といわれる「お腹の健康とメンタルヘルス」ついても関心が高まってきています。
そのようななか、鬱症状やパーキンソン病、そしてアルツハイマー病の人の腸内細菌の種類が少ないことなど、プロバイオティクスの利用によって健康の維持増進につながると考えられるような身体のメカニズムに関することも解明されつつあります。
「お腹の調子」に大きな関わりを持つ、腸内細菌叢は、食事やストレスといった日常の生活の影響を受けやすく、便秘や下痢などの便通の異常を始め、腹痛などQOLの低下に直接かかわることも少なくありません。そのためにも腸内細菌叢の安定は非常に大切なものになります。
そこで、群馬県吾妻郡中之条町在住の66歳から91歳の高齢者218名を対象に、東京都健康長寿医療センター研究所とヤクルト本社が2年間にわたる便の採取による腸内細菌叢の変化についての調査の報告がなされましたのでご紹介させていただきます。
今回の調査の目的は、高齢者における腸内細菌叢そのものが経年的な長いサイクルや、その日などの短いサイクルも含めてどのように変化しているのか・・・?
その変化とプロバイオティクスの利用についての関係性はあるのか・・・?という事です。
調査の結果、対象者の約10%に当たる人の腸内細菌叢において、最優勢菌の入れ替わりなども含めた大きな細菌叢の変化が見られたことと、自己申告による飲用頻度が1週間に3回以上の場合と3回未満の場合とで、細菌叢の変化に有意な差が見られたという事です。
さらに週三回以上という飲用頻度に加え、自己申告における飲用期間についての結果の方が有意な差が認められ、飲用機関1か月の方が、週三回未満の人に対して約50%だったのに対して、10年以上飲んでいるという方については、約15%となりました。
これらの結果は、プロバイオティクスの飲用方法についてもある種のしきい値のようなものがあり、効果的な利用方法が示唆されたという理解もできます。
プロバイオティクスを定期的かつ継続的に飲む意義については、宿主にとっての常在菌とされないため優先的に排出されてしまうなどのメカニズムはわかっていましたが、飲用頻度のみならず、飲用期間についても有意な差が見られたことについてのメカニズムはこれからの課題にはなると思いますが、「食習慣」という言葉があるようにプロバイオティクスが良い意味での腸内細菌叢の改善と安定化に寄与していると言えるのかもしれません。