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2021年09月24日

腸内細菌と人工甘味料

腸内細菌と人工甘味料


 日常的に利用する食品には、多くの人工甘味料と言われるものが使われていることはご存知かと思います。人工甘味料のメリットは甘味に対してカロリーが少ないために少しの使用量で美味しくできたり、加工食品などの分野では製品の総カロリーを少なくできることにあります。

 また、砂糖に代表されるような昔からある天然の甘味料に比べて安価であるという事もあり、食品表示などをしっかり見てみると、「いかに多くの食品でつかわれているか・・・」という事がよくわかります。

 その一方で、人工甘味料の多くは難消化性であることから消化管で吸収されにくく、そのために大腸まで到達し、腸内環境へのマイナスの影響を与える可能性も指摘されています。

 近年の研究では、ソルビトールやマンニトールなどの糖アルコールの過剰摂取により軟便や下痢、場合によっては体重減少を引き起こすような重度の下痢につながるような報告もあるようです。

 これらの人工甘味料については、ガムや飴そして飲料や調味料にも入っていますので、全く摂取しないという事は非常に難しくなってきていると同時に、下痢などの症状については個人差があり「何ともない・・・」方がいることも事実です。

 慶応義塾大学薬学研究科の服部航也氏らの研究グループによると、人工甘味料による下痢などの便性の異常について、難消化性ゆえの腸管内の浸透圧増加により水分の再吸収が抑制されることで下痢が発症するとの仮説を立てていますが、その原因についてはわかっていないというのが現状のようです。

 服部航也氏らの研究グループは、腸管内の感受性に関わる要因として腸内細菌に着目し、マウスをもちいてプロバイオティクスによる下痢症状の改善に関する実験を行いました。

 実験の内容としては、無菌マウスと通常マウスに対してそれぞれソルビトールを投与した場合に、無菌マウスでは、体重減少を伴う重度の下痢症状を起こしたのに対して、通常マウスは発症しないという結果となりました。

 さらに、通常マウスに対して抗生物質を使用し腸内細菌叢を攪乱させた場合においても、無菌マウスと同様の結果を得られました。

 これらの事から、特定の腸内細菌が糖アルコールによる下痢に関わっている可能性が示されたとともに糖アルコールをプレバイオティクスとして利用している菌株の存在についての仮説を立て、下痢が発症しなかったマウスの腸内細菌叢を解析しました。

抽出した腸内細菌に対してソルビトールを投与し培養したところ、ソルビトールの濃度に比例してエンテロバクター目の細菌群とクロストリジウム目の細菌群の増加が認められたというのです。

 これらの結果からすると、一部の腸内細菌によって糖アルコールを利用することができるかどうかが、下痢の発症に大きな関わりがある可能性が示されたました。

この結果、重度の下痢を引き起こしてしまう人には朗報かと思いますが、腸内細菌がプレバイオティクスとして利用してくれたとしても、腸内細菌叢のバランスの取れた安定が前提になりますので、過剰摂取に気を付けるという事には変わりはありませんね。

 




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