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2022年04月09日

食品の保健効果に関与するプロバイオティクスの考え方について

食品の保健効果に関与するプロバイオティクスの考え方について


 食品の健康効果に関する表示は、基本的には「してはいけない・・・」という事になっています。

 その一方で、日本国内では、1991年から特定保健用食品などの表示許可制度ができ、関与成分と健康効果に対して、ヒト臨床試験で検証されたものに限り表示することが出来るという制度がスタートしました。
 その後、2015年からは、機能性表示食品という制度が加わり、「国が評価、検証する」だけでなく、「企業が責任をもって評価、検証をする」という事でも表示が可能になってきました。

 お腹の健康が、身体全体の健康に大きく関わっていることが次第に解ってきた現在では、発酵食品など、「微生物が関わっている食品」が注目され始めています。

 その中でも、最も注目をされているのが、「プロバイオティクス」と呼ばれる、人間に有益な影響をもたらす微生物です。

 このプロバイオティクスという言葉が、1989年にイギリスの微生物生態学者、ロイ・フーラー博士が提唱して以来、プレバイオティクス、さらにはシンバイオティクスというような人間にとっての有用な微生物に関する様々な概念が提唱されてきました。

 その一方で、このような食品の保健機能表示については、国単位で異なっており、EU諸国では、食品の保健機能表示については許可制となっており、欧州食品安全機関(EFSA)によって審査されるという仕組みになっています。

 そのなかで、プロバイオティクスについての位置づけは、「プロバイオティクス」という言葉自身が既に、保健機能を想起させるという認識のもとに審査が行われているために、EFSAによる審査そのものが、非常に厳密になっているのだそうです。

 現在、イタリアなどで、各国ごとの制度において表記を認めている事例はあるものの、EFSAの審査をクリアしたプロバイオティクスは1件も無いという状況です。

 EFSAによるプロバイオティクスに関する審査のガイドラインでは、

・適切に実施された複数のヒト臨床研究の証拠が明確に示されていること。
・その臨床に関わる効果を的確に説明する作用メカニズムが示されていること。
・疾病のリスク因子の軽減の考え方が取り入れられていること。
・疾病と密接な因果関係を有するリスク因子について、これらを低減する結果の提示が示唆されていること。

 など、プロバイオティクスやプレバイオティクスの本質的な役割は、「未病」の予防や状況改善、さらには疾病の再発予防という予防医学の概念が色濃く出ています。
 
 また、アメリカではアメリカ食品医薬局(FDA)によって保健機能の表示について行われているようですが、ヒト臨床試験を行う際に、新薬臨床試験開始届が必要で、プロバイオティクスに関するヒト臨床試験が、この制度の適用範囲であるかどうかがいまだ明確ではないという状況が続いているようです。

 更に、アジア地域では各国の制度でプロバイオティクスに関する規定が定められている国々が多く、プロバイオティクスという考え方の普及が進んでいると言えるとされています。

 ヒトと共生微生物との様々な関係性は、古くから当たり前のようになされてきましたが、メカニズムの解明やプロバイオティクス有効性に対しての研究の歴史は始まったばかりという状況であると言えるのかもしれません。

 健康な社会のためにも、プロバイオティクスの有効性や作用のメカニズムを適切に訴求するためのエビデンスの蓄積が、世界での共通の認識への第一歩かもしれません。






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