2022年04月30日
味覚と栄養素との関係を考える

食事は、身体をつくるための全ての源であるということは言うまでもありませんが、ただ食べればいいという事でもありません。
健康を維持していくためには、「バランスの良い食事」というキーワードをよく耳にしますが、「バランスの良い食事」をするには、何をどれだけ食べれば良いのか・・・?を常に考え続ける・・・という事では少々疲れてしまいます。
とはいえ、偏った食事によって健康に悪い影響が出るようなことも良くありません。そこで、今回は、「味覚」という視点から栄養のバランスを考えていきたいと思います。
食べ物は、食べることで様々な活動を担うエネルギー源として働きます。そのエネルギーとしてよく耳にする単位がカロリーです。
カロリーという単位はエネルギーの単位で、14.5℃の水1ℓを、15.5℃まで1℃上昇させるために必要な熱量とされており、なかなかユニークな単位ではありますが、水の性質などを含め厳密であるとうことで多くの場面で使われている単位です。
また、その熱量をどのような栄養素の割合で食べるのか・・・が実は重要なことになってきます。その人にとって身体の機能を最大限に引き出すためには必要なエネルギー量も、必要な栄養素の割合も異なってくるという事は、想像は出来るでしょうが、厳密に計算して食事をしているわけでないという人の方が多いのが現実です。
実際に、トップアスリートと思考や創造力を求められるアーティストや研究者とは必要なエネルギー源の割合は異なってくるという事に対してどう対応しているのか・・・?という事になります。
三大栄養素と言われる、たんぱく質、脂肪、炭水化物に関してもそれぞれ役割があります。
たんぱく質は、筋肉になるという印象が強いかもしれませんが、アミノ酸と共に窒素を有しているためにホルモンや酵素、DNAやRNAを含めた体内のあらゆる重要なものをつくっています。
脂肪も、「カロリーが高くいけないモノ・・・。」というイメージが強いですが、脂肪を構成する脂肪酸は、体内の全ての細胞を包んでる膜をつくったり、ビタミンを貯蔵したり、眼球や関節を衝撃から保護する作用も担っています。
炭水化物も過剰な糖摂取によるリスクのみが注目されがちですが、食物繊維も炭水化物に含まれていますし、食物繊維などに含まれるグルコースはたんぱく質に含まれる窒素と結びついて、DNAやRNAを構成するとされていますので、非常に重要なものであるとともに、腸内細菌と言われるような共生微生物にとっても、様々な代謝物を供与してもらうためには、エサとして重要な存在でもあります。
さらに、微量元素と呼ばれる、ビタミンやミネラルには、ナトリウムやマグネシウムなどのように心臓をはじめとする全ての細胞を電気的刺激で動かしている源としての役割をするものもあります。
しかしながら、これらの栄養素は私たちが食事をするうえで、実験室で試薬を混ぜるようにひとつひとつのモノを選択して食べているわけではありません、
どんな食材でも、組成は異なるものの様々な栄養素が入っています。その栄養素は化学物質として、味覚のセンサーに働きかけます。
このように味覚のような、働きを持っているのは人間だけではないと考えられており、その時の状態において必要な栄養素を取捨選択するための重要なシステムだと言われています。
近年では、味覚に関する受容体は舌だけでなく、腸を含めた消化器官にも存在し、食物が消化の過程で分解されている間も、栄養素を追跡していることが解ってきただけではなく、このような機能は「全身に持っているのでは・・・」という議論も始まっているようです。
「今日、何食べたい・・・」という何気ない会話も、必要な栄養素のデータベースからマッチングする食べ物の味覚を脳に送ることで、「今日は、〇〇が食べたい・・・!」というやり取りをしていたとすれば、「食べたいもの・・・」や「食べたくないもの・・・」に対する見方も変化してくるのかもしれません。
ただし、脳の報酬系につながってしまうような「甘い刺激・・・」には引き続き注意が必要であることはお忘れのないように。