2022年07月23日
感情と睡眠との関係を考える・・・Ⅱ

睡眠不足が重なることで、イライラ感が増したり、意味もなく楽しい気分になるなど、感情の起伏が激しくなってしまいコントロールがうまくいかないという経験がある方も多いのではないでしょうか。
以前にもご紹介させていただきましたように、睡眠には感情やストレスを前頭葉とうまく連携することで衝動抑制と言われるような、「気持ちを和らげる効果」があるといわれています。
特に、レム睡眠中には、感情的な記憶からドラマティックな部分をそぎ落として理性的な記憶に組み替えていくというメカニズムが働き、感情のコントロールに対して大きな働きをしていることが解ってきました。
睡眠不足は、神経の緊張が継続してしまうことになりますので、イライラなどの感情のコントロールが難しくなるだけではなく、脳組織そのものにもダメージがあるとWHO(世界保健機関)でも警告をしているほどです。
カリフォルニア大学バークレー校のマシュー・ウォーカー氏によれば、必要な睡眠時間に対して、睡眠が2時間以上少なくなることで、感情を規制する前頭前皮質に深刻な影響を与えると述べています。
さらに、睡眠不足によって、精神的健康の重要な要素を規定する脳の仕組みの損傷に繋がり、より非合理的で原始的な反応につながる可能性も指摘しています。
十分に眠れていないことによる、「より非合理的で、原始的な反応」というのは、睡眠不足が、感情などの鈍さと受動性につながるといわれてきたところもありますが、この研究によれば、物事に対して反発的になり、より感情的かつ、暴力的で制御不能になる可能性にも注目しなければいけないという警告にもなります。
また、十分な睡眠をとった18人のグループと、寝ずに過ごした18人のグループ、それぞれに視覚からの情報に対する脳波をモニタリングするという実験では、「感情的にポジティブなもの(ぬいぐるみやペットなど)」、「感情的にネガティブなもの(事故現場、など)」、そして「ニュートラルなもの(器具、家具など)」の画像を見せたところ、睡眠を十分にとったグループでは、3つの分類に対して、それぞれ異なる反応を示していたものの、睡眠をとらなかったグループでは、脳の反応に差が無かったという結果になったというのです。
この研究の結果によれば、睡眠不足によってそれぞれの情景を感情的に区別することが出来なくなり、感情のコントロールの欠如を示している可能性を示唆しています。
睡眠不足による感情的な反応のリスクについて説明させていただきましたが、他にも日常生活に大きな影響を与える特徴的な反応もあるそうです。
その影響とは、感情のバランスが損なわれることで、刺激に反応する能力の低下です。
つまり、睡眠不足の間の運転は飲酒運転と同等であるという事と同じで、事故に遭うリスクが高いことを意味します。
さらに、睡眠不足は、思考パターンにも影響を及ぼすとされています。先ほどの事故のリスクの上昇にも言えることですが、様々な情報によって判断を下すという意思決定や、記憶の引き出しの開閉にも影響が出るとも言われています。
これについては、24時間のシフトを行う医療従事者の医療ミスが4倍にも急増するというような研究報告もあるほどです。
睡眠不足は感情への影響だけではなく、様々な疾病につながる可能性を高めてしまうことが明らかになっています。 例えば、免疫システムは睡眠不足の影響を受けるとされていますし、糖尿病、癌、肥満の発症に影響することを示すデータも報告されています。
睡眠は、感情循環を回復させ、日々の課題により適切に対峙することができる最善の方法と考えることも出来るのかもしれません。
Posted by toyohiko at 12:10│Comments(0)
│身体のしくみ