2024年04月19日
ストレスとコルチゾール

健康経営という考え方が一般的にも認知されるようになり、企業などにおいても働く人の健康に対して具体的な取り組みをすることも多くなりつつあります。その中でも、重要視されているキーワードがストレスと睡眠です。
そもそも、日本では、「寝ずに頑張る・・・」や「寝酒・・・」という言葉が、違和感なく受け入れられてしまうように、睡眠に対して軽んずるような文化があるとされていますが、その文化も次第に変わりつつあります。
そのような中、注目されているのが「ストレスホルモン」とも呼ばれているコルチゾールという物質です。
ストレスホルモンと言われる理由は、コルチゾールが身体にストレスを受けると、ストレスから身を守ろうとして急激に分泌が増える副腎皮質から分泌される抗ストレスホルモンであり、元気を出す免疫抑制ホルモンの一種ということからです。
特徴的なのは、コルチゾールの分泌は視床下部-脳下垂体-副腎皮質の間にあるフィードバック機構によって制御されており、朝には起床や一日の生活のスタートのために多く分泌されますが、夜には睡眠のために早朝値の半分以下の値に減少するというような日内変動があることが知られています。
ストレスなどで、コルチゾールの作用が過剰になると、体重が増えたり、顔が丸くなったり、血糖値や血圧が高くなったりという症状を引き起こすこともあり、「クッシング症候群」と言われています。
また、低すぎても疲労感、 全身倦怠感 、脱力感、筋力低下、体重減少、低血圧などがみられることが知られており、 食欲不振、 悪心 ・嘔吐、下痢などの消化器症状、無気力、不安、うつなどのメンタルヘルスにも関係してくる可能性もあるようです。
また、自閉症児に対するコルチゾールの日内変動に関する研究報告では、健常な小児と比較した結果、日内変動の乱れが認められるケースも多く、脳の視床下部-下垂体-更に副腎皮質系の機能異常との関係も示唆されています。
身体のあらゆる機能の一つに恒常性というものがあると考えられています。この恒常性とは「本来の正常な姿に戻そうとする力」が生物のあらゆる機能の中に備わっているということです。
抗ストレスホルモンであるコルチゾールも、この恒常性に対する役割を担っているのだとすれば、日常的なストレスによる過剰分泌は、冷蔵庫の扉を開けっ放しにしているようなものと考えることが出来るのかもしれません。
多くの方がお判りかと思いますが、冷蔵庫を開けっ放しにすれば冷却装置は当然のようにフル稼働になりますし、故障の原因となる事は想像に難くありません。
その機能があるから良い・・・ということではなく、その機能が起動する原因を取り除くことをしていかないことには、本体が壊れてしまう・・・ということです。
そもそも、身体の適応能力は優れており、身体自身が普通を勘違いしてしまうことで本来の機能が損なわれることがあることも知っておく必要があります。
ストレスホルモンと言われるコルチゾールも、起床とともに多くの量を分泌し、就寝時には抑えられるという、日内の変動サイクルを維持することはメンタルヘルスにとっても有効なことであると同時に、ストレスがかかり続けることのリスクについても意識しておく必要があります。
そもそも、不安、緊張、興奮という精神的なストレスは、生理学的にもNK細胞の活性低下やEBウイルス抗体価の上昇を示したりすることが報告されていますので、思考の癖も含めたメンタルヘルスへの負荷の軽減はプライベートライフのみならず日常的に意識することが大切になって来ているのだと思います。
Posted by toyohiko at 16:50│Comments(0)
│身体のしくみ