2024年05月23日
ビタミンDと免疫力との関係をあらためて考える

ビタミンDと免疫との関係性は、これまでも多くの場面で言われてきました。ビタミンDは脂肪分の多い魚や卵の黄身などから摂取できるとともに、太陽の光を浴びることによって皮膚内で作られ、代謝や骨、筋肉、神経、免疫系の健康に重要な役割を果たすと言われています。
そもそもビタミンDと免疫力との関係性に対する関心は、「ビタミンDの生成を助ける太陽光が比較的少ないデンマークで、ビタミンD不足を指摘された人は、その後10年以内にがんを発症するリスクが高い・・・」という研究データからと言われています。
英国のフランシス・クリック研究所の免疫学者のカエターノ・レイス・エ・ソウザ氏は、「ビタミンDは、数百もの遺伝子の活動に影響を与えているので、複雑なのです。」とビタミンDと免疫システムとの関係性に対する難しさについて触れています。
また、いくつかのデータの分析の結果、ビタミンD活性が高い患者は様々なタイプのがんの生存率が高く、免疫治療への反応も良いことも報告されています。
そのような中、腸の組織に含まれるビタミンDが、特定の腸内細菌を増やし、それがリンパ球の一種であるT細胞を刺激してがん細胞を攻撃させている可能性があるという研究結果が、先月、米国の学術誌「Science」で発表されたのです。
そもそも、腫瘍の発生とビタミンDレベルとの相関があることはわかっており、ビタミンDの活性に関する遺伝子の状態と免疫療法と実施した場合の反応の改善との関係などからもビタミンDと免疫系との間に腸内細菌が関わっていることについても多くの研究者が言及しています。
今回の研究では、マウスによる実験になりますが、ビタミンDの活性と移植された癌に対する免疫依存性耐性についての相関関係のみでなく、その耐性と腸内細菌叢におけるバクテロイデス・フラジシスの割合とも大きく関係していることが解ったと報告されています。
これらの事は、ビタミンD、腸内細菌、および癌に対する免疫応答の3つの間に大きな関係性をもっていることが明らかになりつつあることです。
いままでも、がん治療の効き方に患者の腸内細菌叢が関係しているらしいことは、他の研究でも指摘されていました。今回の研究は、腸内細菌叢の違いということだけでなく、T細胞の働きにも関係し、癌への攻撃力を高める「チェックポイント阻害薬」が効く人とそうでない人では、腸内でよく見られる細菌に一貫した違いがあることも明らかになったというのです。
だからといって、「すぐさま、ビタミンDをたくさん摂りましょう・・・」ということでもなく、多くの方がご存知のようにバランスの取れた食事、睡眠更に適度な運動が必要な事には違いはないかと思いますし、それにかかわる腸内細菌叢についても極めて複雑な要因によって今回の結果に至っています。
今回の研究についても、ビタミンD、微生物共生群集、およびがんに対する免疫応答との間に、これまで認められていなかった関連性を示唆してるものの、ビタミンDレベルががん免疫と免疫療法の成功の潜在的な決定要因であることについても述べていることからすれば、意識は必要ですが、ビタミンD=がん予防というような短絡的な働きを期待するのも良いことではないのかもしれません。
Posted by toyohiko at 10:41│Comments(0)
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