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2017年10月21日

ファミリーサティスファクション(Family Satisfaction)という考え方

ファミリーサティスファクション(Family Satisfaction)という考え方


 ビジネスの世界では、CS(顧客満足度)という言葉がよくつかわれます、その顧客満足に対する取り組みの中で重要とされているのが、「その仕事に就く人たちの満足度が上がらないと・・・」という考えでES(Employee Satisfaction)と言われる従事者満足です。

 ESのような価値観を大切にしようという流れの背景としては、高度経済成長の時代から成熟社会へと変化していく中で、「生産性の向上」というところに改めて着目せざる得ない状況になったということもあると思います。

 「生産性」については、国際比較の中で日本における、特にサービス業の生産性の低さが話題に上るということは多くの方がご存じの事かと思います。

 ここで、改めて「就業」という視点で日本と他の国との比較をしてみますと、日本固有の特徴が浮き彫りになってきます。

 その特徴の一つが、「長時間労働」ともう一つは、単身赴任に代表されるような「家族分離を前提とした就業形態の常態化」なのだろうと思います。

 これは、高度経済成長時代の成功体験に基づく「仕事第一主義」が社会に大きく根付いていることによるものではないかと思います。男性が口にすると良く言われている「家族サービス」という言葉も、今まで培ってきた価値観の象徴的な言葉なのかもしれないという気もします。

 また、人が生活していく上で大切な価値観の一つとして「生きがい」という言葉がありますが、この「生きがい」と「仕事」とを同じステージに考える事を良しとする価値観も日本特有に就業観の一つになっているような気がします。

 しかし、現実的には、企業を含めた組織の目指す方向と個人の価値観をガッチリ一致させる形で組織運営が出来ればいいのですが、多様性の尊重も含めて、多少の折り合いをつけながら、大局的なベクトルを合わせていくという運営の方が現実的です。

 その時に、「仕事に生きがいを・・・」という、個々の期待に添えきれないというのが組織としての実態であり、「その期待に応えてもらえない」という失望感の代償も組織は負わなければならないことになります。

 とはいえ、現在の就業形態から考えると、生活の中の多くの時間を仕事に使うということは現実としてはありますので、個人的には、仕事に期待するのは「生きがい」ではなく、「やりがい」はそれぞれに沢山あっていいものということからしても、「やりがい」にしていくことが大切なのだと思います。

 つまり、「生きがい」は仕事以外にしっかりと作っていくことが大切だということになります。仕事以外ということになれば、「ワークライフバランスを大切にし、家族を含めた生活の充実」にチカラを入れられる環境づくりを「個」も「組織」もお互いにつくっていくことが大切です。

 実際に、人間にとって一番のストレスは「身内の不幸」というデータもあります。一番のベースである生活の基盤が不安定では、決められた時間に集中することは難しくなり、当然のことながら仕事のパフォーマンスは落ちてしまうといういことすら、既存の価値観で直視できなくなっている状況も多くみられるのが実態です。

 その顕著な例の一つが、

 「会社に遅くまで残っている人」=「頑張っている人」という価値観です。

 「家族サービス」という言葉が、普通に使われて、多くの人が違和感を感じないという現実です。

 これらは、仕事第一主義という価値観に縛られた大きな「負の遺産」なのかもしれません。
「家族サービス」という言葉には、「自分は家族の一員ではない・・・」という何とも言えない違和感につながるメッセージを感じている方も多いのではないでしょうか。
 男性が家事をするときについつい口にしてしまう「手伝おうか・・・」という言葉に対する違和感も同じです。この違和感は、「分担する」とか「しない」とかということではなく、その言葉から垣間見える「仕事で忙しいんだから・・・とう感情から来る他人事感」なのだと思います。

 人間同士の関係性や自己肯定感へのダメージは、1回の大きな衝撃よりも、「日常的な小さな違和感の積み重ね」の方が大きく影響するのかもしれません。

 このような社会に大きく浸透した価値観は多くの組織を画一化します。しかし、多くの組織はその構成員に対して「アイディア」というものを常に求めているという矛盾もあります。

 性差とか、家族の役割それぞれの考え方を尊重できる風土が様々な経験につながり、多様性を認めることにもつながると思います。
その「多様性こそアイディアの宝庫」と考えることが出来れば、組織内の個の尊重といいうES(Employee Satisfaction)の考え方から、生活基盤も含めた個の社会との関わり方の尊重であるFS(Family Satisfaction)という考え方も、組織にとって大切になる時代になって来るのかもしれません。




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Posted by toyohiko at 12:26│Comments(0)社会を考える
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