身体のチカラ › 2025年01月24日
2025年01月24日
「我が家の味」と腸内フローラ

皆さんには、「我が家の味」とか「おふくろの味」というものがありますでしょうか・・・?
小さい時から食べ慣れた味というものは、どことなく安心感につながるものです。例えば、和食の代表的な献立の一つである、味噌汁やお雑煮などはその代表的なものではないかと思います。
かつては味噌汁の違いや、お雑煮の違いで喧嘩になった・・・などという話も度々耳にするようなことあるくらいです。
この話は、一見食文化のようの話題のように見えますが、別の見方も出来るというのです。
「食べたものは、実は腸内細菌によってきめられている・・・」というような話を聞いたことがあるかたもいるかと思いますが、この食文化の礎を担っているのが腸内フローラの可能性があるというのです。
ヒトを含めた多くの哺乳類の腸内フローラは、食糞や分娩時の直接的な伝播や免疫システムにも関わると言われている遺伝子情報を基にした設計図のようなもの、さらに食事の内容の3つの要素によって大きく作用すると考えられています。
そのように考えた場合に、ヒトであれば3歳までにその人固有の腸内フローラが出来上がるということも含めて、その時の食事の影響は少なくないと考えることが出来ます。
ご存知のように、腸内細菌もエサとなるものの多い少ないという状況によって、構成される菌株の割合が変化していきます。そのエサの元になるのは、当然のことながら食事から摂る様々な栄養素になりますので、腸内フローラも当然のように影響を受けるということになります。
慶應義塾幼稚舎と横浜初等部で食育教育に取り組んでいます医師の菅沼安嬉子氏によりますと、「3歳くらいから子どもはいろいろなものを食べ始めるので、『我が家の味』というものを一品で良いので作ってみてください。人間には『これを食べると癒される』という味があるようです」とその人にとっての懐かしく、忘れられない味の重要性に触れています。
更に、「我が家の味」は反抗期の癒し飯にも・・・というように、腸と心の安定についても、「思春期になるとホルモンが嵐のように体内に出てきて脳がパニックを起こします。本人もどうしていいかわからない状態になり、時には親に暴言を吐きますが、それは本人ではなくてホルモンが言わせているので本気にしてはいけません。そんな時は『我が家の味』を作って黙って出してあげることで穏やかになることもあります」とも述べています。
更に、食べるだけでなく、食事をつくることの大切さについても、「奥さんに先立たれた時、残された男性はすぐに亡くなる方が多いですが、自分で料理を作れる人は大丈夫です。・・・」と、高齢になった時の幸福度に大きな影響を与えることにも言及しています。
そして、「小さい頃に作った経験があると、しばらくブランクがあってもいざとなったらできるもので、子どもの頃の食育はとても大事です」とし、「働きながらの育児は忙しく大変だが、1週間に一度で良いので手作りに挑戦してほしい。」と、子どもの頃からのバランスのとれた食事の重要性について、将来の生活習慣病やがん予防との関係性についても述べています。
ご自身の腸内フローラと大きく関係している「我が家の味」、そして、その味を自らつくることが出来ることが、長い意味での幸福度につながる・・・というような考え方も、大切ですが、一方で、「・・・しなければ」にとらわれ過ぎず、経験する、体感する場面が増えていく事で「やったことないから・・・」にならないことを大切に出来るというような軽い受け止めかたをすることで、意識し続けることが出来るのではないでしょうか。
勿論、小さい時からいつも飲んでいた飲み物や、よく連れて行ってもらったご飯屋さん・・・のように必ずしもつくってもらったものでないものが「我が家の味」であってもいいと思います。
こうした、「我が家の味」というような味の記憶は、単なる記憶ではなく・・・腸内フローラにとっても心地いいエサの供給源になっていることで、脳腸相関を通じて心の安定につながっていることの可能性も意識していくことをしてみたらいかがでしょうか。