身体のチカラ › 2025年02月14日
2025年02月14日
マイクロプラスチックとリーキーガット

マイクロプラスチックに関する社会的な課題については、生物への影響というような生態系に関する環境問題から、人体からの検出事例の報告が上がり続ける中で、人体の影響に関する健康リスクへと広がりつつあります。
日本国内においても、2024年2月に東京農工大学の高田秀重教授らの研究グループによって、人の血液から1000分の1ミリ以下の微細なプラスチックが検出されたという、国内では初めての研究事例の報告がなされています。
海外では、既に脳をはじめ様々な臓器からのマイクロプラスチックの検出事例が報告されており、認知症をはじめ多くの疾患との関連性に対する研究も多くなり関心の高さが伺えます。
高田秀重教授によれば、プラスチックは環境中で非常に細かくなっていくことで、「粒子を取り込んだ魚などの海洋生物の食事による摂取」、「大気中に舞っている粒子の呼吸時などの吸引」など、様々な過程を経て、体内に摂取されている可能性があると指摘しています。
更に、「プラスチックに含まれる添加剤の中には、人の健康や生殖に影響を与えるような成分が含まれている。細かくなってマイクロプラスチックになっていくと簡単に溶け出して生物に取り込まれてしまうようになる。有害性の高い物質は今までも国際条約で規制が行われてきたが、プラスチックにはまだ有害性の検討が不十分な物質が無数に含まれている。このため、使用量と生産量全体の削減が非常に大事だ」とも述べています。
世界では年間3億5300万トンあるとも指摘されるプラスチックごみですが、マイクロプラスチックということで考えれば、洗濯排水に含まれる微細な化学繊維片、走行する様々な車両にから排出される微細なタイヤ片など削減に対する課題が多いことも事実です。
その一方で、多くの生物の消化器官には外界からの異物を取り込まないための仕組みが備わっています。嘔吐や下痢などの排泄の仕組みや消化管に集中している免疫システムなどもその一つです。
一部の化学合成によって作られた人工添加物もそのような意味では、マイクロプラスチックと同様に、人体の本来持っているメカニズムによって体内に入り込み、血液中や様々な臓器に蓄積されることなく腸管バリア機能によって排泄されるという考え方もあるかと思います。
そもそも腸管のバリア機能のなかに、腸管上皮細胞の隙間を密着させるという機能があるのですが、その機能に障害がおこることで、細菌や毒素が体内に流入してしまうことがあり、この現象を「リーキーガット(腸漏れ)」と呼んでいます。
この「リーキーガット」は、皮膚や腸管などの組織に存在し、外部からの刺激や異物の侵入を防ぐ役割であるタイトジャンクション機能と言われる細胞同士を密着させる細胞接着のメカニズムによるバリア機能の不全ともいわれており、腸内細菌の乱れによっておこされているともされています。
このような、リーキーガットのような状態に陥ってしまうことで、外界からの異物であるマイクロプラスチックの体内への流入や蓄積のリスクも高まってしまうとすれば、必ずしも良いことではありません。
このようなリーキーガットに陥る要因というものは、環境問題や食品に関わる様々なっ社会的背景によって、残念ながら高まりつつあります。その一方で、腸内環境を整えるような生活習慣を心掛けることで、リーキーガットのような症状の予防の可能性も指摘されています。
これは、ちょうど宇宙空間での感性症予防について、無菌状態を追求していくことへの限界という課題に対して、宇宙飛行士の免疫システム低下への対策という視点を同時に取り入れ、その手段のひとつとしてプロバイオティクスを利用するのと同じ発想なのかもしれません。
生活を取り巻く環境によって、様々な健康リスクが存在するとともに、一つ一つの要因が複雑に絡み合っています。
そのためには、一つだけに対するアプローチだけでなく、出来ることを総合的に対処していく事が大切です。その方法のひとつに腸活を含めた腸内環境の維持向上によって健康リスクの回避につながるということであれば、今すぐにでも始められる予防手段につながるのかもしれません。