2019年02月01日
食べ物と腸内細菌との密接な関係

生物と微生物との共生関係については様々な研究がおこなわれ、近年では多くの事が判り始めています。特に消化器官を中心とした腸内細菌との関わりについては特に多くの関心を集めています。
ほとんどの哺乳類は自身の身体をつくるために食物を分解してアミノ酸やビタミン、短鎖脂肪酸などをつくっていますが、その多くは、臓器でつくっているのではなく腸内細菌などの微生物のチカラを借りて「つくってもらっている・・・」のです。
例えば、人間はビタミンKを生成することができないため、腸内細菌がつくっています。
また、最近知られ始めた事でもありますが、多くの民族は海苔などの海藻類を消化することができないのですが、日本人の腸内には海藻からアミノ酸を合成することができる腸内細菌がいることで、海苔を栄養素の一つとして食べることができます。
このように、生物種だけでなく歴史的な食習慣の違いによっても腸内細菌の構成がことなり、宿主との共生関係も様々な形になっているのです。
また、種の進化の過程に於いても腸内細菌の様々な様子がうかがえるそうです。
理化学研究所生命医学研究センターの大野博司氏によりますと、霊長類も進化の過程で様々な腸内細菌の共通性や分岐などの特徴が表れているそうです。
例えば、ヒト、チンパンジー、ボノボ、ゴリラの腸内菌叢を比較すると、基本的に細菌の種類は共通性はあるものの、食物によって構成比が変化したり、ヒトに関していえば多様な食生活をしていることもあり非常に多くの微生物と接触していることとの関係性も多様な腸内菌叢に表れているということの様です。
この腸内菌叢の多様性については、免疫システムの発達とも大きく関係していることが次第に分かってきています。
無菌マウスの実験等からも腸内細が存在しないと免疫システムの発達が遅く、腸管内の免疫システムの情報センターとしての役割をしているパイエル板や孤立リンパ小節などの組織が小さいだけでなく、免疫グロブリンのひとつであるIgAの産生能力が低かったり、免疫細胞を制御するT細胞も少ないことが分かっているそうです。
さらに、腸内細菌が食物を分解してつくりだす短鎖脂肪酸の一つである酪酸が、アレルギーなどの自己免疫疾患の要因と考えれれている免疫の過剰反応を抑制するような免疫寛容を担う制御系T細胞の分化や促進に大きく関わっていることもわかり始めているそうです。
これらの、ことを見て見ると「卵が先か、ニワトリが先か・・・?」だけでなく、「食べ物が先か、腸内細菌が先か・・・?」のような、食べ物と腸内細菌との密接な関係も見えてきます。
例えば、先ほどの酪酸を含めた多くの代謝産物をつくると言われているクロストリジウムの仲間は、食物繊維が好物だと言われています。
マウスに対して、食物繊維を多く含むエサと、ほとんど含まないエサを与えた両者を比較したときに、高食物繊維食のマウスの腸管内には短鎖脂肪酸とアミノ酸の量が際立って増えただけでなく、制御系T細胞の活動が活発になったという報告もあります。
自分自身にとっての良い菌を増やすための食習慣が腸内細菌の変化を通じて、健康に直接つながるということになりそうですね。