2019年05月18日
メンタルヘルスとプロバイオティクス

脳腸相関という言葉が多くの場面で聞かれるようになってきました。これは、脳と腸が双方向の情報伝達を行っており、互いに作用しあっているという概念としてとらえられています。
しかし、近年ではその考え方に対してもう少し踏み込んだ「脳腸-腸内細菌相関」というような、消化器官としての腸というとらえ方ではなく、腸内フローラも含め全体という考え方が中心になってきました。
このことは、拒食症患者の腸内フローラのディスバイオーシスや自閉症、統合失調症、注意欠陥障害、多動症、パーキンソン病、アルツハイマー病など、様々な精神・神経疾患に対して、腸内フローラの関与を示唆する研究報告がなされ始めたことなどから腸内細菌そのものと脳との関係に対して注目が集まっているという事なのだと思います。
腸内に共生している微生物が神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、GABA(γアミノ酪酸)などを直接産生することは、近年多くの研究者によって知られるようになりました。
GABAなどは、実際に複数の微生物の組み合わせで発酵させた食品などが特定保健用食品として販売されているというような事例もあります。
また、このような神経伝達物質の受容体を微生物自身が刺激をしたり、神経伝達物質を産生するための細胞を直接的に活性化するという事も近年の研究報告ではなされているようです。
また、腸内フローラの異常(ディスバイオーシス)という観点からみても、腸管内に存在する一部の大腸菌群が代謝する毒素が原因となり、様々な疾患の引き金になったり、腸管内の上皮バリアが破綻することで、いわゆる腸漏れ(リーキーガット)の状況に陥ってしまうようなケースも報告されていると同時に、特にパーキンソン病や脳梗塞などに関して言えば、腸内微生物による代謝性内毒素血症によって発症や進行に悪影響を及ぼしているという事が示唆されているのです。
このような研究は、マウスによる特定のプロバイオティクスの定期的摂取によって焦燥や認識ストレスが改善されるというようなことや、ヒトにおいても乳酸桿菌やビフィズス菌による情動やストレスに対して改善作用があるというようなプロバイオティクスを利用した、メンタルヘルスの維持改善に関して具体的な研究が進んでいるようです。
その一方で、よく動物実験として行われるマウスを対象とした実験では、ヒトに対する検証結果とマウスに対する検証結果の共通性は認められないというケースも少なくないという課題もあるようで、これは、動物の中で最も脳が大きいといわれるヒトゆえの特別なメカニズムが関係しているのかもしれません。
とはいえ、プロバイオティクスとメンタルヘルスとの関係について、さらに進んでいき様々なことが解っていくことで、日頃の生活において食生活の大切さの見直しにつながると良いですね。