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2019年07月26日

もし、身体が無菌状態だったら・・・

もし、身体が無菌状態だったら・・・



 世の中でこれだけ「除菌」「殺菌」という言葉があふれる中、ある意味不思議なタイトルだと思うかたもいるかと思いますが、その不思議な視点から人間の身体を考えていきたいと思っています。

 一般的なイメージでは、菌=汚くて悪いものというイメージがある一方で、近年では、腸内フローラという言葉とともに様々な生物の中にも共生している細菌類が存在してるということも徐々に浸透しつつあります。

 実際に存在してる生物では、通常の環境で生息している以上、無菌であるという個体は存在しないといわれています。しかし、実験室レベルでは人工的に無菌状態のマウスなどを利用することがあります。

 この無菌マウスは、当然のことながら通常の環境では多くの細菌やウィルスに汚染されるために特別な環境で飼育することになります。

 その理由は、単純で通常の環境下では感染症にかかり死亡してしまうからです。

 もう一つ、無菌マウスには通常のマウスとは大きく異なる違いがあるといいます。

 その違いとは、小腸の壁にあるはずのひだが存在しない事や、解剖したときに盲腸が腹部のほとんどを占めているというほど巨大化しているというのです。
このような特徴の理由についてはまだわかっていないということでありますが、「虫垂は人間にとって退化したものであったいらないもの・・・」という考え方から、「腸内細菌の貯蔵システムの一つなのでは・・・」という仮説とも関りがあるのかもしれません。

 また、無菌マウスのもう一つの特徴は、免疫システムにも顕著に表れているということです。

 無菌マウスの生後、数年かけて作り上げられるといわれている免疫システムが生後まったく成長せず、免疫システムのトレーニングセンターともいわれているパイエル版の数も極端に少なく、領域も小さいといわれています。

 つまり、無菌であるという事と免疫システムとの発達とは非常に密接に関係してると言わざるを得ないということになります。

 言い換えれば、腸管を含めた共生微生物については、免疫システムの発達において重要な役割をしているために、この共生微生物状況が病気と闘う能力について、大きな差として表れるのです。実際に通常モルモットが赤痢菌に感染しても何ともないが、無菌モルモットに感染すると必ず死ぬそうで、無菌モルモットに通常モルモットの腸内細菌を1種類移植しただけで赤痢菌に感染しても死ななくなるというようなこともあるのです。

 さらに、菌を殺すことで感染を抑えるための抗生物質が、他の感染症に対して負の影響を与えるということについても、多くの事例があるようです。

 例えば、抗生物質を与えられたマウスは鼻から挿入されたインフルエンザウィルスを追い払うことが出来ずに発症してしまいます。
ヒトの例でも、85,000人を対象にニキビ治療のために長期間抗生物質を処方されたグループは、抗生物質を使わなかったグループに比べて風邪も含めた上気道感染症の感染者数が二倍になったという報告もあります。

 これらの事例を見ても、抗生物質は感染症を治すための薬なのに感染症に罹りやすくなるという現実もあります。「無菌」イコール「清潔」というイメージだけでなく、「清潔」という目的が行き過ぎることのリスクも考えないといけないのかもしれません。



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Posted by toyohiko at 17:15│Comments(0)身体のしくみ
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