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2019年12月14日

食べ方によって違う食品のチカラ

食べ方によって違う食品のチカラ


 食べ物を食べるときに、「健康に良いもの・・・」という食品の選び方をしている人も多いかと思いますが、同じ食材を同じ量食べれば同じ量の栄養素を摂取できるかどうかというのは実は違ってくるのはご存知でしょうか。

 よく言われるのは、ビタミンCなどの熱に弱い必須栄養素の場合に加熱することで減ってしまうことがある・・・などです。

 今回は、お腹の調子を整えるために腸内細菌のエサとしても注目されている食物繊維を中心に考えていきたいと思います。

 食物繊維の健康効果ということについては、先ほどのように腸内細菌のエサ、プレバイオティクスとしても注目されていますが、食物繊維を増やした食生活を長く続けることについて効果についての研究もあります。

 この研究について紹介しますと、250人のアメリカの女性の体重と食物繊維の摂取量について20か月の追跡調査を行ったところ1000kcalにつき食物繊維が1g増える毎に体重が0.25kg減ったという結果が報告されています。
 「20か月で0.25kgと言われても・・・」と思うかもしれませんが、1000kcal当たり8g増やした女性は2kg減ったということになります。

 こうなると、具体的にどうすれば良いのか・・・ということに関心が沸いてくると思います。

 例えば、ケーキの約60%は炭水化物といわれています。精白された小麦粉と砂糖の入ったケーキは小腸で素早く吸収されます。
 一方、ブロッコリーもおよそ70%が炭水化物で出来ているといわれるものの、そのうちの半分は難消化性の成分になりますので半分は食物繊維として、腸内細菌に分解・消化されるという結果になります。

 現在、炭水化物についてある種、嫌われ者のようになっていますが、その炭水化物に含まれる分子の種類によって大きく左右されるとハーバード大学のレイチェル・カーモディ博士は指摘しています。

 カーモディによると、食べたものが小腸で吸収されるか、腸内細菌によって短鎖脂肪酸に変換された後に大腸で吸収されるかが重要だというのです。

 先ほども言いましたように食物繊維の含有量は粉砕したり絞ったりすることで変わってしまうということを知る必要がありそうです。

 例えば、一切挽いていない全粒小麦の場合は100g中に含まれる食物繊維の量は12.2gといわれていますが、全粒粉といわれる粉の状態にすると10.7g、さらに私たちが普段口にする精白した小麦粉の状態では3gと、実に4分の1に食物繊維の量が減ってしまいます。

 今はやりの、スムージーなども同じで250mlの搾りたてのフルーツスムージーに含まれる食物繊維は2~3gとされていますが、果物をそのまま食べれば6~7g摂取できるとされています。このようなことは、加工された100%果汁といわれる市販のジュースにも同様のことが言えるようで、食品は加工度が上がれば上がるほど中に含まれる食物繊維も含めた栄養素の構成が変化していくことを理解してかなければならないのかもしれません。

 こうなってくると、「なんでも生で食べることが一番・・・」という発想をする方もいるかもしれませんが、そうとも言い切れないのが現実で、そこについても知っておく必要があります。

 この生食という分野においても「生食ダイエット」と呼ばれるようなブームがあることも事実です。

 ハーバード大学進化生物学教授のリチャード・ランガム氏は、「ヒトは食べものを火で調理するようになったことで、大きな身体大きな脳をもつ種として進化した」という考えを持っており、あらゆる食品において、加熱することで化学的な構造が変化し、生のままでは吸収できない栄養素を取り込めるようになったり、加熱することで有益な腸内細菌を殺しかねない植物などの天然毒素を中和していくことでバランスをとってきたと述べています。

 ダイエットという意味では、生食は吸収できるエネルギーが少なくなりすぎるために減量効果がありすぎて、健康を損なう危険があるとまで言われているほどです。そもそもヒトが火を使いだしてからの歴史の長さと進化の過程を考えてもリチャード・ランガム氏の知見は大切なものということになります。

 いずれにしても、食べるということに対して、調理法も含めた食べ方にも身体にとって良いことと、そうでなことがあるという認識も必要かもしれません。





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