2020年06月18日
身体と水の関係を改めて考える(Ⅱ)

前回は、「汗」という視点から夏の暑さに対してどのような備えが必要かをお話ししましたが、今回は水分補給という視点から身体と水の関係を考えていきたいと思います。
以前にも紹介しました神奈川県済生会横浜市東部病院患者支援センターの谷口英喜センター長は、「こまめな水分補給が大切・・・」とされていますが、一番大切なのは、「食事をしっかり摂ること・・・」と言っています。
例えば、朝ごはんを抜いてしまった場合に、不足する水分を補給するためには市販の経口補水液500mlが必要であると説明しています。
それでも、「最低限の水分補給・・・」であり、身体を動かすための様々なミネラルは足りていない・・・ことになるそうで、しっかりと食事を摂ることの重要性を指摘しています。
近年では、若年層の朝食欠食率の高さが指摘されていますが、このことから考えても「若いから大丈夫・・・」という事ではなく、隠れ熱中症といわれるような軽度の熱中症の症状による体調不良などもこれからの季節は特に気を付ける必要がありそうです。
谷口英喜センター長によりますと、食事には体液を構成する水をはじめ身体を動かすための様々なミネラルなどの栄養素が含まれているので、水分補給という概念の中に「食事をしっかりと摂る」を中心に考えてくことが大切です。
もちろん、食事プラスアルファとしての水分補給も大切になってきますので、そのときの量についても説明しています。
成長期の子どもの場合などは、「飲みたいときに、飲みたいだけ・・・」が理想的としています。
制限するのは飲物の種類だけで、清涼飲料水や糖分の入っているスポーツドリンクについては糖分の摂取過多になるために気を付ける必要があるとしています。スポーツドリンクについては、運動で行ったエネルギー補給という位置づけのものになるので経口補水液とは含有成分や濃度が異なっていることも意識することが大切なのかもしれません。
子どもの場合、授業中も自由に飲んでも良いという環境が理想的で、その方が集中力も高まり、身体にも良いというようです。
また、成人の場合についてもアルコール以外であれば好きな飲み物で良いということのようで、お茶やコーヒーなどのカフェインの入ったものについての議論もありますが、毎日飲みなれている人であれば身体が順応していくので問題はないという事のようです。
ただし、脱水時の場合はこれらのカフェインの入った飲み物は禁物とされています。さらに、子どもと同様、糖分の多い飲料は避けることが大切としています。
高齢者については、喉の渇きに対して感受性が鈍くなる傾向がありますので、時間と量を決めることが有効になってきます。例えば、1時間おきにコップの水3cmずつ・・・とか、少量でも確実に飲める量を回数多く・・・がポイントです。あとは、高齢者で薬を飲む方は、薬を飲むときにコップの水を最後まで飲むなどの工夫も有効なようです。
身体のなかの水分をいかに、適正に保つかということの大切さは多くのかたがお解りかと思いますが、人間の身体はどこに水分をため込んでいるのか・・・を知っておくことも重要です。
体液というくらいなので、血液やリンパ液は水分であることはご承知の通りかと思いますが、「身体の中で一番水分が多いのは筋肉である・・・」という事を理解しておくと水分補給だけでなく、「貯筋」によって健康を保つことが出来ることに気付くと思います。
こうして考えると、たんぱく質の多い食事に気を付けて、適度な運動をすることで筋肉量を維持向上させることも実は熱中症対策につながるということになるのです。
高齢者が、熱中症になりやすいことの原因に「口の渇きに鈍感になる・・・」ということが多く取りざたされていますが、加齢による筋肉量の低下も大きく関係していると考えられています。
水分不足の原因は色々とあると思いますが、それらを理解することで自分に合った熱中症対策をしてみましょう。今後、熱中症による救急搬送の増大も予測されるなか、地域の消防関係に携わる方や、医療関係者も今年は感染症対策も含めた救急救命になりますので、助ける方も体力的にも精神的にも過酷な状況が予想されます・・・。
出来ることは、自分の身体の仕組を理解した上での、自らの健康管理・・・に尽きるのかもしれません。