2020年10月09日
特定保健用食品と機能性表示食品

1991年に施行された特定保健用食品の制度も約30年を迎えようとしていますが、制度そのものの認知度が約30%と当初の目的を達成するというところまでは行ってないという評価になっているようです。
そもそも、消費者・食品事業者の協働による経済社会構造の変革を目的に、健康にもっとも影響力のある食習慣において、健康の維持増進をサポートし、ひいては昨今の大きな社会的課題である社会保障費の軽減にもつながるという目的で、従来、行われてこなかった食品に関する健康効果に対する表示(ヘルスクレーム)に関する制度です。
その後、2015年には機能性表示食品という制度が施行され、日頃の食習慣によって健康の維持増進を支えるために消費者にとって解かりやすくしていくための制度がさらに追加されました。
その一方で、それらの制度についても全く問題が無いわけではありません。
すでに表示許可を受けた事業者が許可表示の取り消しを受けたり、誇大な健康効果や誤解させるような表現を巧みに利用し、売り上げを確保しようとする姿勢がありありと見えたりする事例など、景品表示法違反での摘発事例などがあることも事実です。
ここで、現在の特定保健用食品と機能性表示食品の二つの制度の違いを確認してみたいと思います。
特定保健用食品については最終製品を用いた人を対象とした臨床データをもとに消費者庁が審査を行い「許可」をする制度になっています。「許可」する内容については、「健康効果について定められた内容の表示」という事になりますが、特定保健用食品の場合にのみ特定の疾病リスクの低減についての表示が出来ることになっています。
また、機能性表示食品の場合には関与成分に関する論文や臨床データなどの健康効果の根拠となる資料の「届出」によって表示をすることになっているために、事業者が責任をもって表示するという届出制になっています。
また、特定保健用食品には、通称トクホマークといわれるマークの表示が認められると同時に、今年から新しい制度がスタートしました。
新しい制度とは、公正競争規約に基づいて事業者団体によって構成される公正取引協議会を設置し、公正取引委員会及び消費者庁が認定するという制度です。
その公正取引協議会では、自主的に表示について違反の疑いの調査や広告表示の事前相談、消費者からの苦情対応などとされており、しっかりとした基準を満たしている事業者の特定保健用食品として許可された商品への「公正」マークの発行がなされるようになったことです。
このような公正競争規約をもって自主的に運営される、公正取引協議会などは78団体あり、規約は業種、品目など細分化されており102にも上ります。
今回のような、食品の健康効果に対する表示については、初めての試みであり、健康への関心の高まりに対する、信頼の砦として期待されている制度の一つです。
実際には、これからのことになると思いますが、特定保健用食品の表示マークに「食後血糖値」「お腹の調子」「血圧」などのカテゴリー名に加え、「公正」の表示がされるという形になり、消費者にとってより解りやすく且つ、信頼できるものになる事が期待されています。
このような背景には、一部の誇大な表現やあえて誤解を与えるような表現によって消費者の健康被害はもとより、先に述べたような社会保障に関する費用の増大に結びつく可能性が排除し仕切れない為に、自主的な公正性が求められてきたという事だと思います。
ずいぶん、昔のことになるかもしれませんが「あるある被害者」という言葉が、医療関係者の間で流行したという事を記憶しています。この「被害」とは、テレビ番組で紹介された一部の食品の健康効果を妄信してしまうことで、結果的に栄養摂取バランスが崩れてしまい体調不良を訴える人たちが後を絶たなかったという事例です。
よくよく考えてみれば、食事・運動・睡眠のバランスを大切に、なるべく多くのものを食事で摂り入れることの重要性はいまさら言うまでもありません。
また、同じ関与成分にも関わらず、申請した健康効果の分野が異なっていたり、日本国内では「整腸作用」分野の表示のみになっていますが、他の国ではさらに「免疫」「アレルギー」と他の分野の表示が認められているなど、国によってもヘルスクレームに対する考えかたも異なりますので、そこのところも自身の健康の維持増進のためにも知っておく必要があるかもしれません。
Posted by toyohiko at 10:53│Comments(0)
│食べ物を選ぶ