2021年07月02日
Day Zero「水がなくなる日」~見えない水を守る

皆さん、「DAY ZERO」という言葉を聞いたことがありますでしょうか・・・?ここでのZEROは、「水」を示しており、「地球から水が無くなる日」を表す言葉として近年注目されています。
地球から水が無くなる・・・と言われても「海には沢山水があるじゃないか・・・」と思うかもしれませんが、人間の日常の生活を支える水である淡水の話です。
地球上にある水の内訳をみてみますと、海水97.5%、固体化された淡水(北極や南極の氷などもこれに入ります)1.75%、そして飲み水になる可能性がある淡水は1%しかないと言われています。その1%のうち97.5%が地下水、残りの2.5%が川や湖などの目にすることのできる水で地球全体からすると0.025%しかないということになります。
ここで、枯渇が一番心配されている水は、帯水層や伏流水などを含む地下水です。
帯水層などの地下水は川や湖沼などの表層水の約100倍あると言われており、地中にしみ込んだ雨や雪が地中にある砂礫層に到達することで長い時間をかけて蓄積していきます。この砂礫層の厚さは数メートルから、平野部などでは100メートル以上になる地域もあるそうで、さらに国内の河川は広い川でも1,000m程度ですが、帯水層は平野部では数10Kmの幅で存在することが解っています。
この表層水の100倍もあるといわれている帯水層の減少が近年急激に起こりはじめ、持続可能性に対しての不安が明確な問題になりつつあるというのです。
その帯水層の水の減少の原因の多くは、食に関することと言われています。フランスをはじめとするヨーロッパでは、保全された採水地でボトリングした水を飲料水として日常的に利用することは良く知られています。これらのような世界的に有名なブランドの採水地の枯渇が話題になりつつあります。
また、アメリカやブラジルなどの畜産業では内陸部の広大な土地を利用することで、効率的な農業がおこなわれています。この基盤を支えているのが森林伐採と広大な土地の地下にある帯水層の水です。
特に、畜産業では大量のエサを必要とし、そのためにトウモロコシをはじめとする植物の生育に大量の水が使われています。その水の多くは表層水からではなく帯水層を汲み上げることで成り立っています。
その量は、ハンバーガー1個に2,200L、ステーキ1枚に3,700Lの水が必要だと言われています。さらにこのような形でつかわれた水が、食材や加工品となり世界中を移動することから、これらの食糧輸入量を水で換算し、バーチャルウォーターと名付けていることは多くの方がご存知かと思います。
2005年の環境省の資料によりますと、年間にバーチャルウォーターというかたちで日本に入って来る水の量は800億㎥にのぼり、世界中で使われている農業用水の約16%にもなります。更に、食べ物を無駄にすることによる水の無駄は、私たちが風呂、トイレや洗濯に使う量をはるかに上回ります。もし、25%の食べ物が無駄にされているとしたら、それは世界中で1,275億㎥の水が無駄になっていることになります。
世界規模で考えれば、人口爆発に対する食糧生産の量の急激な増大に伴う、食料の生産に費やされる水が課題になっているのです。
しかし、このことは何千年もの歳月をかけて出来上がってきた帯水層となどの「見えない水」が、地球の水循環システムの中での蓄積と消費という関係性が完全に崩れ、たった数十年で今までの貴重な財産を擦り減らしているという現実があり、地域によっては貧困などの格差をもたらし、水不足に対するデモ活動までも行われています。
この「見えない水」に関する課題は、食料という視点だけではなく、ゲリラ豪雨に関係する水災害や、本来であれば、伏流水という見えない水と両輪であるはずの河川の表層水も、治水優先という理由で三面張り工法によるコンクリート河床が増え、水路化した河川など原因は様々です。
このような課題も、全く解決の糸口が無いわけではありません。例えば、ほこりが経つとか、雑草が生えて困るという事よりも、水に逃げ場がなく下水から海に直接いくしかない状況ではなく、地表に振った雨が地中に浸透しやすいように、出来る限りコンクリートで固めずに表土を残すことも可能だと思いますが、日常の利便性は残念ながら下がることになります。
河床についても現在では蛇篭を用いた多自然型工法の技術が進んできましたので、それらの工法に転換するという方法もありますが、「蛇が住み着いてしまう・・・」というような理由で、実施までには至らないという事例も耳にしたことがあります。
蛇は外来生物であるウシガエルの過剰な繁殖の抑制には有効であり、生態系における正常な食物連鎖にとっても欠かせない生き物の一つと考えられていますが、目の前に出てこられると勝手が違うようで、都市部では110番通報につながるケースもあるという話も聞きます。
SDGsの17の目標の中でも、「6.安全な水とトイレを世界中に」、「11.住み続けられるまちづくりを」、「12.つくる責任、つかう責任」、「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」と「水」と直接的に関わると思われる目標は6つもあります。
樹々が無いところには水はない・・・
雨が森をつくるのではなく、森が雨をつくっている・・・
森の樹々が地中から水を汲み上げ、雨の核となる水蒸気をつくり、大気に潤いを与えることで、森の成長に必要な雨をもたらす・・・とも言われています。
地球上のありとあらゆる「生命」を支える「水」、育水という言葉もありますが、私たち自身が「目に見えない水」に支えられていることを意識することが、あらためて必要なのかもしれません。