2021年07月16日
ストレスの悪循環を考える

ストレスの原因の多くは、自分自身の考え方や意識と実際に起こったことの「ズレ」であることは前回も申し上げましたが、その後、時間が経ったのにも関わらず、「あの時のことが、気になってどうもイライラする・・・」という経験はありませんでしょうか。
このような状況によって、ストレスの慢性化につながる可能性があるそうなのです。
日常生活のなかでの様々なストレス反応は、危険回避のために本来身体に備わっている機能になりますので、ある意味仕方がないこと・・・になりますが、その状況を「想い返す・・・」ことで、その時に受けたストレスを自らが慢性化させると考える必要があるというのです。
慢性化したストレスは、コルチゾールが出続けている状態になりますので脳にとってもマイナスの影響が出てしまいます。その一つが、脳の記憶に関する司令塔とも言われる海馬に影響を与え、細胞を委縮させることが最近の研究で分かってきました。
また、PTSDのように個人は解決できないような非常に強い精神的なショックを受けた場合も同じように海馬の委縮という症状が出ることも解っています。
ここで、問題なのは一時的なストレスの多くは、他者からの理不尽な扱いや叱責など外的な刺激によって引き起こされますが、ストレスの慢性化につながる「想い返し・・・」については、怒ったりした人からの原因ではなく、想い返している自分自身の内的な刺激によってストレスを発生させているという事に向き合わなければならないという事です。
当然、「あんな想いをしたくない・・・」とか「許せない・・・」という感情があることも事実です。しかし、その感情が、「起きた事実」を色々な方向に膨らませてしまうことで、かえって事を複雑にしてしまうケースもあるのではないでしょうか。
「昔話との喧嘩は絶対に勝てない・・・」という話があります。つまり、昔話はその人の感情のバイアスがかかってしまい、事実とのズレが大きい場合が少なくない為に、そもそもの話がかみ合わない・・・事が多いという例えばなしの一つだそうですが、ある意味、的を射ているとも云えます。
また、嫌な気持ちのまま、家に帰ったりした時、家族から不機嫌さに対しての指摘をされる事で新たなストレスを生み出し、そうした想いを正当化するために意地を張ってしまう・・・ことで、さらなるストレスにつなげてしまうという悪循環は、自らが流れを絶つことをしていくしか方法がないと気付くことが大切なのです。
先ほども言いましたように、この悪循環の状態はコルチゾールが停滞している状態なので、脳への直接的な影響はいうまでもなく、コルチゾールの量と睡眠ホルモンであるメラトニンの量は逆相関の関係にあることからしても睡眠の質も下げることにつながってしまいます。
脳にとっての睡眠は、オーバーホールのようなものになりますので、ストレスの慢性化につながる悪循環からなかなか抜け出せないことは大きなリスクになります。
ストレスを避けるという事はもちろん大切なのですが、自分自身の中でストレスを緩和するための心理的安全性を生み出すスキルを持つという事が大変重要になります。
具体的には、普段のうちから自分自身が落ち着いたり、リラックスできる環境や、そんな存在でいられる関係性を真剣に探しておく事だと言われています。そして、自分自身にとっての心理的安全性の高いシーンをしっかりと記憶に留めておくことが重要なのです。
ストレスが慢性化したり、過剰になった時には、危機やネガティブな事ばかりに脳が囚われてしまって自分の心理的に安全な存在を新たに探すチカラが残っていません。そんな時に手遅れになってしまわないためにも「普段から・・・」が大切なのです。
「家族」などがそれにあたる人は多いのかもしれません。その一方で、家族や身近なパートナーが心理的安全性から最も離れた場所と感じてしまう人もいると思います。
「ある場所へ行く」「あるものを食べる」「ある人に会う」「誰かと話す」・・・どんなことでもいいので、自分自身にとって大切なシーンを持ち、準備しておくことが出来れば、急にストレスがのしかかってきても自分のチカラで、ある程度のストレスに対しての対処がし易くなるのです。
こうした、心理的安全性を手に入れ易い状態を用意し、「想い返し・・・」を断ち切ることがストレスの悪循環から逃れる最も良い方法なのかもしれません。