2021年11月12日
糖質制限食と腸内フローラ

「日本食」は、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」を、「和食」(日本人の伝統的な食文化)と題して、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。
また、無形文化遺産としての「日本食」の特徴として、「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」、「自然の美しさや季節の移ろいの表現」、「正月などの年中行事との密接な関わり」とされていましたが、ここで最も注目したいのが「栄養バランスに優れた健康的な食生活」です。
特に「1975年型日本食」と呼ばれる食事内容に関する特徴は、大きく5つの要素に分けられるとされています。
まず一つ目は「さまざまな食材を少しずつ食べる。主菜と副菜を合わせて3品以上を揃える。」というような多様性。
二つ目は、「煮る」「蒸す」「生」を優先し、次いで「茹でる」「焼く」を使うというように、「揚げる」「炒める」は控えめに、カロリーや脂肪を抑える調理法を工夫していること。
三番目は、大豆製品や魚介類、野菜(漬物を含む)、果物、海藻、きのこ、緑茶を積極的に摂取し、卵、乳製品、肉を過度に摂取しないように食材を選ぶ。
四番目は、だしや醤油、味噌、酢、みりんなどの発酵系調味料を上手に使用し、塩や糖分の摂取量を抑える。
最後に一汁三菜[主食(米)、汁物、主菜、副菜×2]を基本として、さまざまな食材を食べるとされています。
その一方で、最近では「糖質制限食」が注目され始め、内臓脂肪を減らす効果など健康効果に対する注目が集まってきています。
この日本食と糖質制限食は、「主食を中心に・・・」という考え方と、「主食を減らし、たんぱく質と脂質などで補う・・・」という正反対の考え方になりますので、「どちらが良いか・・・?」と悩まれる方もいるのではと思います。
そもそも、先ほど紹介した「1975年型日本食」と呼ばれるものは、欧米化した現代の食事と比較して、腸内フローラの改善をし、内臓脂肪量を減らすなど種々の代謝指標を改善することが報告されています。
現代の食生活の方向性を見てみますと、主食である炭水化物に対するネガティブなイメージもあり、「低炭水化物ダイエット」という言葉があることも事実です。
主食を抜いてしまうことで体重の減少などの成果をあげられたという人が数多くいる一方で、便の量が減ってしまったり、便秘のような症状が出てしまうという話も耳にすることがあります。
東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授は、近年のマウスによる研究で糖質制限食によって老化が促進されるという結果の報告を受け、そのメカニズムの解明のために腸内細菌の変化や老化、さらに炎症などの様々な指標についての調査をしていますのでご紹介させていただきます。
その調査によりますと、通常食と糖質制限食を生後5週目から50週目にかけてそれぞれのグループでの様々な指標の結果、マウスの脾臓の有意な重量の増加が見られたことにはじめ、炎症に関するIL6などのパラメーターの増加や酸化ストレスの亢進さらには、腸内細菌叢では、クロストリジウム目をはじめ、宿主に有害な細菌の増加が見られたというのです。
これらの結果から、糖質制限食によって有益な腸内細菌の減少とともに悪玉菌と呼ばれる有害な腸内細菌の増加と促すことで、老化や炎症に関する様々な指標が増加することが認められたという事になります。
ヒトに関するメカニズムに対しては、これから更なる研究が必要かと思いますが、低炭水化物ダイエットに代表される、糖質制限食は目的や自身の体調の変化を見極めたうえで短期的に取り入れることによる体質改善に役立てることが重要であり、長期的な利用に関しては長生きという意味ではマイナス面も多いことを認識することが必要なのかもしれません。
まさに、「健腸長寿・・・」ということになりますね。