身体のチカラ

　アトピー性皮膚炎という症状に悩まされている方もいると思いますが、「アトピー」という言葉の通り、不特定にあちらこちらに症状が出てきます。しかも、食べたものが因子で発症するような食物アレルギー一つの症状で出る場合もあれば、強い日差しのような、そのほかの原因で症状が出るものなど様々です。

　しかも、このような症状を持っている方の多くが、乳幼児などの低年齢の子が多いために、多くの親御さんにとって、自分のことで無いからこそのつらさを感じている方も多いと思います。

　人間の60兆個あるといわれている細胞は、常に新しいものが作られ、入れ替わりをしています。皮膚の場合も皮膚の一番深いところで細胞分裂が常に起こっており、最終的に皮膚の表面まで移動し、垢となって細胞としての一生を終えるということになります。
　このサイクルをターンオーバーというのですが、アトピー性皮膚炎の症状の方はこのターンオーバーが必要以上に速くなってしまっているために過敏になり炎症反応が出ていることが多いのでは、という話もあります。

　また、その一方で、皮膚としての役割を終え、「垢」となった細胞も実は役割があるのでは・・・と言われ始めています。

　普段、私たちはあまり気にしていないと思いますが、皮膚は常に色々な危険にさらされています。空気中にはカビなどの菌類をはじめ、さまざまな細菌やウィルスなどが常に浮遊しています。

　その、外敵から守ってくれるのが皮膚の上を棲みかとしている皮膚常在菌です。その数は、１cm四方に数万から数10万個とも言われており、免疫システムの一つとして病原菌などの外敵から守ってくれています。
　その代表選手が表皮ブドウ球菌と言われていますが、これらの菌が、表皮の皮脂からの色々な成分を分解し、皮膚の表面を弱酸性に保ってくれることによってバリア機能になっているといわれています。

　そういった意味でも、垢も皮膚常在菌のエサとして大切な役割をしているということになります。最近、俳優の福山雅治さんが実践しているということで話題になった、「身体を洗わない入浴法」も皮膚常在菌を大切に育てる方法として理にかなっているものかもしれません。

　とはいえ、人間は日常生活の中で「清潔が一番」という衛生観念があります。もちろん中毒性が強く、感染後、発症まで時間の短いものに対する予防法としては非常に有効な方法であることは言うまでもありません。

　しかしながら、細菌などの外敵とは異なるような、化学合成物質の場合はいかがでしょう・・・？自動車などの排ガスをはじめ、住宅建材などからでる揮発性有機化合物、除菌・消臭剤から放出される殺菌性の成分など・・・、これらの物質も、実は皮膚常在菌がバリアしてくれています。

　しかし、除菌成分などはそもそも菌を殺すための成分なので皮膚常在菌たちとしては、ひとたまりもない・・・という状況に陥ってしまい、皮膚のバリアが壊れてそのような物質が皮膚から浸入してきてしまいます。
また、シャンプー剤やボディソープなども、化学合成の界面活性剤が入っているものがほとんどです。そういったもので、頻繁に身体をこすりつける・・・という行為も、皮膚バリアの破壊につながっているかもしれません。

　アトピー性皮膚炎のような、皮膚疾患は発展途上国ではあまり見られないという話も聞きます。「皮膚も実は、良い菌と共生していること、で外敵から守ってもらっている・・・」という、ことを少し意識したうえで、目先の清潔第一・・・だけでなく、良い菌をうまくやっていく為の生活習慣を考えてみたらいかがでしょうか・・・？