2013年09月21日
腸内細菌と体重

「腸内細菌が体重変動や栄養効率に影響を与えている・・・」この、まさか?と思われるようなことが、実は動物実験レベルでは行われていて色々な研究報告があるのです。
九州大学大学院医学研究院臨床医学部門心療内科教授の須藤信行氏によると、「摂食障害の人の場合、極度の低体重時には十分なカロリーを摂取しているはずなのに、体重の増加が見られないといった現象がみられることがありますが、これは、何かの外界要因によって栄養効率が落ちている可能性があります。その原因の一つとして腸内細菌と栄養摂取との具体的関係を知ることで明らかになるのでは・・・」としています。
この分野の研究は、2006年12月に科学雑誌Natureに掲載された、太った人と痩せた人とでは、腸内細菌の構成が異なっていることを、分子生物学的に明らかにしたワシントン大学のジェフリー・ゴードン博士らのチームによる研究報告をきっかけに、多くの関心の的になっているようです。
このコードン博士たちの研究では、太ったマウスと痩せたマウスの腸内細菌をゲノム解析した結果、フェーミキューティス類とバクテロイディス類に分類した場合、太ったマウスの腸内細菌は、ファーミキューティス類が優勢であったのに対して、痩せたマウスの腸内細菌はバクテロイディス類が優勢であったという結果が得られたというものです。
これは、人についても同様の傾向があったとということです。ちなみに、皆さんがご存じの乳酸菌やビフィズス菌と言われる種類のものは、ファーミキューティス類に分類されるそうです。
また、この研究では痩せたマウスと太ったマウスの腸内細菌を使って無菌マウスがどのようになるかという実験も行っているそうで、太ったマウスの腸内細菌を移植された無菌マウスは太りマウスに・・・、痩せたマウスの腸内細菌を移植された無菌マウスは痩せマウスに・・・という現象が見られたといいうことです。
つまり、このことは体重が腸内細菌の構成を決めているのか、腸内細菌が体重の構成を決めているのかという疑問への一つの答えになるかもしれません。
以前、昆虫の腸内細菌を入れ替えることで、捕食する植物の種類が変わった・・・と言う話も聞いたことがあります。
とはいえ、1000種類以上もあると言われている腸内細菌の中には、未知のものや複数の菌種がそろったという条件下で、一定の働きをしていると考えられているために、1種類だけを調べても菌の性質が良くわからない・・・というものがたくさんあります。
さらに、腸内細菌の世界では、クロストークという言葉までありどうやら、宿主である人間や動物も含めた相互の対話があるのでは・・・と言うような関心を持つ研究者もたくさんいます。
例えば、ストレスに弱い無菌マウスは、不安レベルが高くいわゆる多動という行動現象が良くみられるそうです。しかし、この無菌マウスにビフィズス菌などの乳酸菌を与えると、落ち着いた状態になるということも報告されています。
このような落ち着きのない行動は、脳などの神経系が大きく関与しているということからしても、腸内細菌と脳の関係も含めての、体重と言う結果との因果関係がこれからさらに明らかになっていくことと思います。
いずれにしても、あなどるべからず・・・「腸内細菌」と言うことになりそうです。
Posted by toyohiko at 14:52
│身体のしくみ