2013年09月07日
薬と特定保健用食品

「おコメを食べるだけで花粉症を緩和できる・・・」そんな夢のようなおコメが開発されているそうです。
開発している農林水産省は、2014年度までに人の臨床試験を行い、2020年度までに実用化するということを目指しているということです。
この夢のようなおコメは、「減感作療法」といって、アレルゲンを繰り返し体内に取り込むことによって、身体を少しずつ慣れさせ症状を緩和するという治療法を応用するという考えに基づいて開発されたものと言うことなのですが、どうやら当初の2010年の実用化計画に対して大幅に遅れているという話だそうです。
その理由の一つが、このおコメが「おコメなのか、薬なのか・・・」という議論だったということなのだそうです。当時、開発をした農林水産省は「コメである」という主張をしているのに対して、厚生労働省は、「本当に治療効果があるのであれば薬である」という主張をしたことによって状況が一変したということのようです。
当初、農林水産省はこの花粉症を緩和できるおコメを特定保健用食品として認可を求めていたのですが、同時の厚生労働省が「コメは、粒のままの自然の状態では、成分が一定しない」などの理由で却下したそうす。
最終的には、農林水産省は両者の「考えたかの違い」を受け入れ、医薬品としての判断を受け入れるために有効性や副作用を厳密に検証した長期にわたる試験が必要になったため実用化に向けての着地点が10年延びたということのようです。
現在、特定保健用食品認可に関わる経費がおよそ3億円、医薬品開発に関わる経費が数100億円といわれています。今回のケースがどのくらいの経費が掛っているかどうかは想像がつきませんが、安全性や健康効果などのバランスを考えた場合に、消費者にどちらが良いかをよく考える必要があるような気がします。
今回のように、行政機関が主体になって開発を行っている場合はともかく、企業であればそこで掛った経費は価格転嫁せざるを得ません。つまり、利用する側からすれば、同じものでも医薬品ということになれば「日常から縁遠い存在」になってしまう可能性が高いということになります。
仮に、保険適用であったとしても社会保険料の負担が増大するということにつながります。
また、平成25年4月より北海道では、加工食品に含まれる機能性成分について、科学的な研究が行われた事実を認定する「北海道食品機能性表示制度」がスタートしています。
これは、食品に含まれる成分に関する研究論文などについて、道が、委員会を設置し学識経験者の意見を聞いて「健康でいられる体づくりに関する科学的な研究」が行われた事実を認定するという制度です。これは、北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区制度の具体的な戦略として実施しているもので、認定に関わる費用は約2,000万円といわれています。
単純に、これらの3つの制度を比較しても、かかる経費がずいぶん異なります。当然、「対象となる食品の安全性を担保するということは非常に重要であり、大前提でなくてはいけない。」ということは最優先すべきでありますが、もし、「考え方の違い」という理由で容易に分類が違ってくるということになれば、開発競争に関わる市場原理などの視点からすれば違った見方が出来るかもしれません。
「考え方」という意味では、日本では「免疫」に関する保健効果を許可されたものは食品は、現時点ではありませんが、台湾ではそういった保健効果が認められた食品があります。
どのような表示になっていても、ひょっとすると食べる人にとっては「おコメはおコメ・・・」ということなのかもしれません。私たちも、食品に関わる制度をよく理解したうえで、自分にとってより良く安全な食品を選ぶための知識も必要なのかもしれません。
Posted by toyohiko at 18:23
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