2013年04月05日
何故、お酒を飲むと気分が大きくなるのか

2004年のアメリカのデータによりますと、死亡率を高める日常生活の要因のトップがタバコ、次に肥満、第3位にアルコールという結果が報告されています。
にもかかわらず、多くの人がアルコールを好み、さらには、お酒を飲むことによって、緊張感をほぐしたり、幸福感を得る人もいる・・・という不思議な魅力があるのがアルコールです。
この、「死亡率を高める」にも関わらず、「幸福感を感じる」という矛盾は、なぜ起こるのでしょうか・・・?
アメリカの国立衛生研究所のギルマン博士らが、アルコール摂取時の脳内の反応を測定するという実験を行っています。
その実験は、平均年齢26.5歳の男女12名について、アルコールを静脈注射し、脳の反応を調べるという方法で行いました。このアルコールを注射するということの意味は、飲むという方法だと嗜好の個人差が大きく出てしまう可能性があるため、アルコールという物質のみの反応が出やすい方法をとったというわけです。
その結果、目立って反応した脳の部分は線条体と呼ばれる快楽を生みだすところだったそうです。一般的には、「お酒を飲むと感覚がマヒする・・・」という印象が強く「快楽」というイメージは湧きにくいかもしれませんが、実際の脳の反応を見るとそうなっているということのようです。
この脳に与える「快楽」というのはいわゆる麻薬や覚せい剤などの薬物も同様の働きがあるようで、習慣性を引き起こすということにもつながります。
また、この実験では、「酔っている」という自覚の強さと血中のアルコール濃度との相関関係が見られなかったと言います。このことは、アルコールの摂取量や代謝速度は自覚症状とはあまり関係しないということを表すことになります。
むしろ、酔っているという感覚は、脳が「快楽」を感じている時との関係が深いというような結果になったということです。さらに、脳が快楽を感じている状態で、「恐怖におののく表情」の顔写真を見せたときの反応を調べた結果、平常時では、不安感というものは伝染することが多い為に、脳の扁桃体や帯状皮質など不安情動に関係するところが活性化するのですが、アルコールを摂取し脳が「快楽」感じている状態では脳には強い不安反応が出なかったということです。
つまり、アルコールを飲んだ時の「気が大きくなる」という現象は、感覚がも麻痺してということではなく、様々な不安に対してハードルが低くなるという脳への作用によってもたらされているということになるのでしょうか・・・
もしそうなのであれば、そのことを良く理解したうえで「酒の席での立ち振る舞い・・・」を考え直す必要があるかもしれません。
いずれにしても、アルコール好きにとっては、これに加わって「好みの酒」という要素が入りますので、さらに「快楽」を刺激することになり、実際はもっと複雑な脳への刺激が加わっているのかもしれません。
適度な飲酒は、免疫活性を上げるとも言われていますので、「この魅惑の飲み物」のことを知った上で、良い付き合い方をしたいものです。
Posted by toyohiko at 17:27│Comments(0)
│身体のしくみ
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