2013年03月16日
アレルギーと衛生環境

環境が清潔すぎるとアレルギー疾患が増えるという「衛生仮説」というものが、日本だけではなく世界的にも有力な学説として注目を集めています。
この仮説は、OECD(経済協力開発機構)に加盟している先進国に多くみられるアトピー性皮膚炎や喘息というような症状が、発展途上国ではあまりみられない。
そのような、経緯から始まった学説なのですが、いまでは疫学調査や都市部で生まれ育った子どもと農村部で生まれ育った子どものグループでのコホート分析の結果等からも「アレルギーを発症するか否かには、生活環境が大きく関わってきている。」という説がかなり有力視されています。
いいかえると、この仮説には、「新生児から幼少期にかけては、免疫力を高める物質が少なすぎるの良くない」というにもなります。
母親の胎内にいる間は、子どもは基本的に無菌状態という環境になりますが、出産とともに母親の身体や外気に触れることで、環境中の雑菌などの侵入や感染を受けことになります。これらの侵入を防ぐために新生児の免疫系が反応を始め抗体などを用意する、といった免疫機能を獲得していきます。
つまり、他の動物と同じように自然環境に接していくうちに雑菌や寄生虫といった様々なものに対する免疫をつくっているのですが、周りがあまり清潔な環境で育った場合は、その免疫システムが脆弱なままとなってしまうか、本来無害な物質に過剰反応をして免疫システムが暴走し、アレルギーを発症するのでは、というのがこの「衛生仮説」となる訳です。
だからと言って、衛生的ではない環境で育てば良いというわけにもいかないのが現況です。食中毒菌やインフルエンザウィルス、ノロウィルスなどの病原体から安全でいられるのは清潔な環境があるからこそ・・・という部分も否めません。
人間の免疫システムには、あらかじめほとんどの外敵に対して攻撃を仕掛ける役割を持ったNK細胞のような自然免疫系と、一旦外敵と判断したものを強力な攻撃力で一撃に倒す獲得免疫系があります。
アレルギー反応などの、原因は大した敵ではない身近なものを獲得免疫系が強力に攻撃してしまうことによって、自らの身体を傷つけてしまうためだとも言われています。
また、獲得免疫系が活躍する場合は自然免疫系が手に負えないと判断したものにたいして攻撃を仕掛けますので、自然免疫系の活性度が高ければ獲得免疫系の出番も少なくなり、アレルギー反応のような自らの身体を傷つけてしまうようなことも少なくなると言われています。
つまり、自然免疫系と獲得免疫系のバランスが重要になります。
そのためには、自然免疫系が下がってしまうような、ストレス等に気をつけて、自然免疫系の活性を上げるために適度な運動や、バランスのとれた食事を心掛けることも重要になります。
また、最近では笑うことや、一部の菌株ではありますが乳酸菌等を継続的に摂取することによって自己免疫系の活性が上がることなどの研究結果もでていますので、自分に合った方法を探してみることも大切です。
いずれにしても、衛生環境もふくめ「適度な・・・」ということが重要なのかもしれません。
Posted by toyohiko at 11:16│Comments(0)
│身体のしくみ
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