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2012年11月10日

乳酸菌研究の今・・・(Ⅲ)

乳酸菌研究の今・・・(Ⅲ)

 先日、ヤクルトライスサイエンス財団主催の第21回腸内フローラシンポジウムに参加してきました。この財団は、?ヤクルト本社のオーナーでもありました、故桑原潤氏より寄贈された私財を元に、微生物を中心としたライフサイエンスなどの研究助成などを中心に活動しています。

 シンポジウム当日は、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課ゲノム研究企画調整官 古田裕志氏も参列しこの分野の研究成果に対する抱負を述べていました。この古田氏の所属する部局の名前が示すように、じつは乳酸菌等の研究分野はまさに遺伝子レベルの難解な分野であると同時に、生活全般に関わるものであるということが伺えると思います。

 今回のシンポジウムのテーマは、「食事」「栄養」「環境因子」の3つのアプローチから腸内環境との関わり等について海外の研究者も交えての研究発表がなされました。

 その中でも、腸内細菌と食べ物、さらに肥満などの関係性に対しての研究が多くの関心を集めました。
 その中で、代謝疾患と腸内菌叢との関係性に対する研究では、メタボリックシンドロームの人の腸内細菌とそうでない人との腸内細菌の状態の違いが明らかになってきたという報告がありました。

 特に、脂肪分の多い食事を摂ることによって、腸内のビフィズス菌の減少が見られたり、バクテロイディス等の有害菌とされる菌が優勢になったりということや、薬によって腸内細菌叢が良くなったり悪くなったりと、食事によって腸内細菌叢が変化するということからも、今後はその人に合わせた腸内フローらの改善メニューが提案されるようなこともあるのでは・・・という話題もありました。

 もともと、人間以外の生物は非常に偏食です。例えば昆虫であれば特定の種類の植物しか食べないという種も少なくありません。その偏食との因果関係として大きく関わってきているのが腸内細菌だと言われています。
 つまり、特定の植物しか食べない異なる種の腸内細菌を入れ替えれば好きな食べ物が変わるというわけです

 昆虫などの世界では、すでに色々な実験がされているようですが、今回のシンポジウムでは人間でも、食べ物と腸内細菌叢が非常に密接に関わっているということが分かり始めたということのようです。

 しかし、これも食べ物と変えれば腸内細菌叢が変化し、健康状態が変わるのか・・・、それともその逆なのか・・・というような「卵が先か、鶏が先か・・・」という話は、未だ多くの研究課題がありますが、いずれにしても普段摂る食事と腸内細菌叢が健康状態に大きく関与しているということが解明される第1歩にはなってきているようです。



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Posted by toyohiko at 15:57│Comments(0)身体のしくみ
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