2012年10月27日
オリンピックの魔物の正体

よく、「オリンピックには魔物が住んでいる」という言葉を耳にします。今年のロンドのリンピックでも金メダル最有力候補といわれていた内村航平選手の口からこの言葉が出てきたということも記憶に新しいことだと思います。
オリンピックという場面は、4年に一度の大舞台ということもあり、選手たちは大興奮とプレッシャーで平常心を保つということが大変難しい状況にあるということは言うまでもありません。
この「大興奮」と「プレッシャー」ということが身体に対してどのような影響を及ぼすかということが魔物の正体なのかもしれないと考えることもできると思います。
北京オリンピックの日本女子ソフトボールチームのスポーツ栄養士をやった経験もある、神奈川県立保健福祉大学の鈴木志保子教授によると、「興奮」と「プレッシャー」は体内のエネルギーを消費するだけでなく、食べ物や飲み物の消化と吸収の効率を落としてしまうことから、「オリンピックの魔物とは、“消化と吸収”である。」と言っています。
このことは、当然自律神経と大きく関係していると思いますのでそういった意味でのコントロールというものも必要だと思いますが、結果的に、試合途中にエネルギー不足になってしまい、いわゆる「ガス欠」状態になり、最良のパフォーマンスを引き出せないというリスクが増えてしまうといういことにつながる、ということがその理由と考えています。
事実、鈴木教授は北京オリンピックの際に、試合開始前の決めた時間に食事を摂ることに加えて、飲み物やサプリメント、エネルギー補助食品をベンチ裏に並べ、決められた回で摂るもの・・・、お腹がすいたときに摂るもの・・・、発汗や体温の上昇などの予想された状況に応じて摂るもの・・・、摂りたくない時には摂らなくても良いもの・・・、等と分類して個々が判断して摂るように教育し、実践したそうです。
男子マラソンのオリンピック選考会の時に、期待されていたにもかかわらず、自分のドリンクをうまく取れなかった選手が、良い結果を残せなかったことがあったことも、思い出されます。
試合前や試合中に摂る食事は、当然個人によって異なります。運動する時には、普通エネルギーになり易く消化吸収のいいものを摂ります。ただ、結果を重視しない健康運動の話であればそれでいいのですが、トップアスリートにとっては、消化が良すぎることによってガス欠のリスクが高まってしまうために、あえてドライフルーツやナッツを含んだ消化に時間がかかるものを少量づつ食べるということもしているそうです。
また、運動時はスポーツ飲料を脱水が予防できると考えている人多いようですが、プロスポーツの場合、夏以外は試合や練習が始まる1時間前に250ccの水かお茶を飲むそうです。スポーツ飲料を進めない理由は、日本人の摂る食事にはナトリウムが多く含まれているため、過剰摂取につながる恐れがあるからだそうです。
事実、プロの世界でもスポーツ飲料の濃度は、発汗量、運動量や暑さに応じて調整しているそうで、運動量の少ない一般の運動愛好家が発汗量以上に飲み続けると糖分や塩分の摂りすぎになってしまうことも多いようです。
先日、国民栄誉賞の受賞が決まりました女子レスリングの吉田沙保里選手も食が細くて苦労した時期があったということや、日本女子のレスリング代表団は常に乳酸菌製剤を遠征時には持ち歩いていたという話も聞いたことがあります。
スポーツ選手にとっては「食べることも仕事」という意識があるようです。しかし、過剰摂取も身体に変調をきたし良いパフォーマンスを引き出すことはできません。消化器官も含めた全体の身体能力にあわせて適正量を食べることが大切なことのようです。
鈴木教授の言うように、「オリンピックの魔物は、消化と吸収だ」ということも納得できる話のような気がします。
Posted by toyohiko at 14:57│Comments(0)
│身体のしくみ
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