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2012年08月11日

自律神経と免疫力

自律神経と免疫力

 世の中には、風邪になりやすい人とそうでない人がいたり、食中毒も必ずしも全員がかかるわけでもなく食中毒にならない人がいたりします。
 その違いは、一体何か・・・というと、「免疫力」の高さだといわれています。

 免疫力が高ければ、身体に侵入した細菌やウィルスを排除できるので、発症することなく健康体を保つことが出来ますが、免疫力が低いと細菌やウィルスを排除することが出来ずに身体の中に入った外敵の影響を受け「病気」という状態になってしまいます。

 免疫は、外部から侵入してくる細菌やウィルスだけに働くだけでなく、身体の中で生じる異物からも戦ってくれます。
 「身体の中の異物・・・?」と思うかもしれませんが、人間の身体が細胞分裂を繰り返す中で、約5,000個の不完全な細胞が出来ているといわれています。その完全な細胞こそが、がん細胞といわれるもので、実は、毎日身体の中の免疫システムがこの約5,000個のがん細胞をやっつけてくれているのです。
 しかし、免疫力が弱くなってくると、がん細胞がやっつけきれなくなり、結果がん細胞が増殖する・・・という結果を招いてしまう。ということになりますので、免疫力というのは人間の身体にとって大変大切なものなのです。

 この免疫システムと自律神経がどう関係しているかというと、免疫システムは血液中の白血球という成分が中心を担っています。その白血球には、細菌などの比較的大きめな異物を処理する「顆粒球」と呼ばれるものと、ウィルスなどのそれより小さいものを処理する「リンパ球」の2つがあります。
 これらは、交感神経が優位になると顆粒球が増え、副交感神経が優位になるとリンパ球が増えるという特性があることが分かっています。つまり、自律神経のバランスが良いと白血球のバランスも良くなり、免疫力が高まりますが、バランスが悪くなると逆に免疫力が下がってしまうということになります。

 順天堂大学医学部の小林弘幸教授によりますと、交感神経や副交感神経がそれぞれ過剰に優位になった場合の免疫システムに与える影響を次のように説明しています。

 交感神経が優位になった場合は顆粒球が増えていきますので、基本的には感染症に対する抵抗力が高くなり、免疫力は上がった状態になります。
しかし、過剰に優位な状態が続く・・・となると話が違ってくるようで、問題が発生します。顆粒球というのは、自分自身が持っている分解酵素と活性酸素で細菌をやっつけるのですが、あまり細菌がない状態になっても顆粒球が多い状態が続けば、健康維持に必要な常在菌まで殺してしまい、かえって免疫力を下げてしまうことになるからです。

 また、副交感神経が優位になった時もリンパ球が増えるので、ウィルスに感染しにくくなりこのケースも免疫力が上がったということになりますが、この場合も過剰に優位な状態が続くと抗原に敏感になりすぎて、ほんのわずかな抗原にも反応してしまう、いわゆるアレルギーを起こしやすい状態になってしまうということになります。

 身体を守る免疫システムのことを考えても、自律神経のバランスというのは非常に重要であり、交感神経と副交感神経のバランスが良い時が免疫力も高く、身体にとっても良い状態と言えそうです。


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Posted by toyohiko at 11:46│Comments(0)身体のしくみ
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