2012年07月14日
ばい菌の大切な役割

今や寄生虫博士として有名な、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎氏は、腸内細菌の研究で大きな評価をされています。しかし、細菌研究の分野に対する評価というのは、昔からそうだったわけではないと話しています。
藤田氏の研究のきっかけは、汚物の流れるような川で水浴びをしている子供たちが驚くほど健康で、日本の子供のようにアトピーや花粉症、喘息に悩む子がいない、さらに診察をするとほとんどの子供のお腹の中に回虫がいたということを知り「いままで受けてきた医学教育と全く違う」と思ったことだったそうです。
そこで免疫に関する独自の研究を始め、アレルギーを抑制する物質を寄生虫から発見したのですが、最初のころは殆ど相手にされず学会でも16年間無視され続けたそうです。
しかし、英文で書いた論文がイギリスのネイチャー誌などの海外の雑誌やメディアなどで評価されようやく研究が認められたといわれています。
藤田氏は、「世間から寄生虫やばい菌と呼ばれる“嫌われ者”にも大切な役割があることを知って欲しかった。“菌”と呼ばれるものをすべて排除しようとする過剰な清潔社会に警鐘を鳴らしたかった。」と云っています。
また、藤田氏も著書で記している「腸は第二の脳」といわれている事について、いまではそれほどの違和感無く多くの人が受け入れている言葉ですが、同じようにから20年ほど前までは「そんなはずは無い」ということで医学関係者の中ではほとんど相手にされなかった考え方だったそうです。
以前にもこのことは書きましたが、腸が「第二の脳」といわれる所以を少しだけ説明しますと、まず、下痢の脳の命令とは関係なく腸独自の判断で細菌やウィルスさらにはそこから産生される毒素を体外に排出することや、脳が保有している神経伝達物質のほとんどを腸も同様に持っている事など、まだまだ未解明のこともありますが動物の身体をコントロールする上で大きな役割をしている事などから「第二の脳」といわれています。
また、腸に関する研究課題としては、腸内細菌や交感神経や副交感神経などの神経系の分野など様々ですが、腸内細菌とはじめ多くの微生物と共生しているということは様々な研究分野の成果としてわかってきました。
うわべの綺麗さだけを求めて、 微生物との共生を拒否してしまうことによって身体も心も免疫力が落ちてしまう。むしろ、発展途上国の人たちの方が生き生きと笑って暮らしていて幸せなのでは・・・というような話をする人たちも出てきています。
何事もバランスは必要ですが、「ばい菌の大切な役割」がわかってきてから、人類にとって大きなものを失った・・・ということにはなりたくないですね。
Posted by toyohiko at 15:11│Comments(0)
│身体のしくみ
※会員のみコメントを受け付けております、ログインが必要です。