2012年04月28日
糖尿病治療維新と腸

2010年は多くの人たちが気にしている、生活習慣病の一つである糖尿病の治療にとって記念すべき年になったと言われています。まさに「糖尿病治療維新」とまで言われるような新しい治療法が臨床の場に登場したのです。当時、マスコミでも大きく取りあげられたのでご存知の方もおられるかもしれません。
しかし、その薬がどんな薬かと言いますと、実は腸の働きを良くする薬なのです。
腸は、第二の脳と呼ばれるように脳と独立したかたちでいろいろな働きをします。例えば、食べたものの量や種類を腸自身の引っ張られ具合から敏感に感じ取り、刻々と変わる情報に合わせて消化液を分泌していきます。
さらに、腸を収縮させて先へ先へと食べ物を送っていく中で栄養素を吸収していきます。そして、血糖値が上がって行くのに合わせて絶妙のタイミングで、膵臓からのインスリンの分泌量を調節することで、血糖値を驚くほどの小さな変動範囲に収めていると言われています。
また、膵臓はインスリンのほかに血糖値を上げるホルモンのグルカゴンも分泌します。血糖値が上がるとこのグルカゴンの分泌も減っていくのですが、糖尿病にかかっている人はこグルカゴンがだらだらと出続けてしまうというわけです。
こうした身体のなかの臓器の連係プレーの重要なメッセンジャーがこうしたホルモンたちです。ホルモンは、それぞれの臓器でつくられて血液の中を駆け廻りながら他の臓器の働きを促したり、抑制したりする働きがあります。
腸も、食べ物が入ってきたり吸収されたことを感じるとインクレチンというホルモンを分泌します。そのインクレチンがいろいろな臓器に指令を出すのです。
膵臓に働きかけて、インスリンの分泌を促し、グルカゴンの分泌を抑えるのもこのインクレチンです。さらに脳に作用して食べる行動を変えたり、胃に働きかけて胃の動きの速さを遅くしたりと様々な働きをしてくれるのです。
糖尿病の治療法の一つにインスリンを注射して直接体内に入れるという方法があります。しかし、このインクレチンの働きがしっかりしていれば、膵臓が腸が感じ取った情報をもとにインスリンを出す必要のある時に分泌する力を発揮するだけではなく、血糖値を上げる作用をするグルカゴンを抑えたり総合的に自身の身体の機能で血糖値のコントロールができるようになるというわけなのです。
このインクレチンこそ、腸の働きを良くする薬というわけです。現在は、インクレチン関連薬剤が糖尿病治療薬として成果も納めてきているようです。
つまり、腸を鍛えて腸の働きがしっかりしていれば生活習慣病の予防にもなるとともに、身体の中で大変重要な役割をしているということにもなります。
Posted by toyohiko at 14:23│Comments(0)
│身体のしくみ
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